【論説】第25回参院選は自民、公明両党が改選過半数を獲得した。一方で安倍晋三首相の宿願である憲法改正に前向きな「改憲勢力」は3分の2の議席数に届かず、改憲に突き進む首相に「待った」がかかった格好だ。

 由々しき事態なのは投票率の低下だ。全国の投票率は50%前後となり、2016年の参院選の54・70%を下回るのは確実だ。「1強」を盤石にしたとしても、「信任を得た」とは言い難い。福井選挙区も8・86ポイント低い47・64%で過去最低となった。

 ■滝波氏、公約に注力を■

 福井選挙区は自民党現職で経済産業政務官の滝波宏文氏が、共産党新人の山田和雄氏、政治団体「NHKから国民を守る党」新人の嶋谷昌美氏に大差をつけて、再選を果たした。

 滝波氏は「地方の成長なくして、我が国の成長なし」を掲げ、地元目線の訴えが広く県民に浸透した。地方を重視した成長戦略の策定など1期6年間の実績も票につながったといえる。ただ、知事選のしこりが投票率の低下につながった側面も否めない。北陸新幹線の整備加速や人口減少対策の推進など、公約を実現すべく注力してほしい。

 山田氏は、野党統一候補を擁立した1人区の32選挙区中、唯一の共産党公認。選挙前の党首討論会で安倍首相が言及するなど注目を集めた。しかし、連合福井が早々に「応援できない」と決め、立憲民主や国民民主、社民の各党が推薦、支持を見送るなど一枚岩になれなかったため、支持の広がりを欠いたようだ。

 ■国民投票議論が前提■

 改憲勢力が3分の2に届かなかったことで、首相の軌道修正は必至だ。野党に秋波を送り多数派の形成を目指すことも想定される。一方で、改憲勢力の間でも具体的な改憲案で一致していない。自民党は9条と緊急事態対応、参院選の合区解消、教育充実の4項目を掲げている。

 特に首相は9条への自衛隊明記というレガシー(政治的遺産)づくりに前のめりだが、公明党は公約で「多くの国民は自衛隊を違憲の存在とは考えていない」と指摘、「慎重に議論されるべきだ」としている。各種世論調査でも国民が重視する項目の中で「改憲」の順位は低いのが実情だ。

 首相は「改憲を議論する政党を選ぶのか、審議を全くしない政党を選ぶかを決める選挙だ」と主張してきた。13年の選挙で大勝したため、議席維持のハードルは高かったこともあるが、そうした首相の居丈高な姿勢に国民が危うさを感じたのも一因だろう。

 立憲や国民など野党も議論自体は否定していない。とりわけ野党が指摘する国民投票法の問題点、CM規制の議論を進めるべきであり、改憲論議の前提として建設的な議論を求めたい。

 ■長期政権の度量示せ■

 投票率の低下は「1強多弱」の下で、1票を投じても「何も変わらない」という人が増えたとしたら、もはや民主主義の危機とも呼ぶべきレベルだ。

 安倍「1強」のこの6年間には安全保障関連法や「共謀罪」法、「カジノ」法など国論を二分する法案を与党が数の力で強行採決し可決させてきた。財務省の文書改ざんや自衛隊日報の隠蔽(いんぺい)、不適切データなど、民主主義の土台を崩しかねない不祥事も相次いできた。官邸主導政治で与党は追認機関と化し、官邸に人事権を握られた官僚の劣化も著しい。

 こうしたことへの国民不信が投票率低下の背景にあるとするなら、政治家、特に与党議員は襟を正す必要がある。非力な野党にも責任の一端はある。新選良には「良識の府」「言論の府」にふさわしい参院をつくりあげるべく汗をかく気概を求めたい。

 11月に史上最長となる安倍政権は論戦から逃げず、異論にも耳を傾けて幅広い合意形成を目指す度量を求めたい。国民の将来不安を和らげ、希望の持てる社会を描くことに専念する時ではないか。

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