【論説】一乗谷朝倉氏遺跡や白山平泉寺をはじめ福井、勝山両市の「石」に関連する文化財が、文化庁の日本遺産に一括認定された。東京五輪や北陸新幹線福井・敦賀開業を控え、地元では相乗効果による観光客増に期待が膨らんでいる。

 日本遺産は、地域に点在する文化財を「面」として活用、発信することで地域の活性化を図るのが狙いだ。そのため、遺産をつなぐストーリーが重視される。

 県、福井市、勝山市は「400年の歴史の扉を開ける旅~石から読み解く中世・近世のまちづくり 越前・福井」と題して共同提案していた。これまでも朝倉氏遺跡や白山平泉寺の認定を申請していたが、かなわなかった。今回は全国72件の申請の中から16件が認定され、日本遺産の累計は83件(福井県関係は4件)となった。

 ■現在も体感■

 申請したストーリーでは、大量の石を用いて計画的にまちが形成され、その景観や多彩な石文化が現在にまで受け継がれ、体感できる点を強調した。構成文化財は合わせて27件にのぼる。

 このうち、白山平泉寺は一帯に石垣や国内最大規模の石畳道が広がる。中世には国内最大級の宗教都市だった。石積みや矢穴(やあな)と呼ばれる石を割る技術は、計画的につくられた一乗谷のまちづくりに強い影響を与えたとみられている。

 近世の福井城下のまちづくりには、足羽山で採掘された美しい青色の「笏谷(しゃくだに)石」が大量に用いられた。福井城址(じょうし)の石垣や歴代藩主の廟所(びょうしょ)「大安禅寺千畳敷」などが知られる。勝山市では九頭竜川の河岸段丘を活用。高さ5~6メートルの「七里壁(しちりかべ)」と呼ばれる石の壁が現存し、壮観だ。

 文化庁は「石文化を伝える興味深い景観は見る人の想像力をかきたて、笏谷石の形跡を今も見ることができるのは面白い」と評価した。

 ■研究と観光戦略■

 今後どう展開し、地域の活性化につなげるか。まず、ストーリーに磨きをかけることが大事だ。特に遺産の核となる平泉寺と一乗谷の進んだ石の技術や、それを担った工人集団の解明は、戦国時代の歴史研究に寄与する。

 日本遺産は世界文化遺産推薦の前提となるものではない。しかし、「白山平泉寺の世界遺産へのステップが一段上がった」(勝山市教委)と受け止めている。実現には、さらに遺跡の調査研究や情報発信が必要だ。

 一方、日本遺産に認定されると国の財政支援が受けられる。このための組織として、県と福井市、勝山市、地元の関係団体などによる協議会が設立される見通しだ。関係者が連携を強め、総合的なガイドブック作成やシンポジウム開催などにつなげたい。

 観光客の受け入れ態勢の整備もこれからの課題だ。ある程度ターゲットを絞って観光戦略を構築。観光ルートづくりを進め、外国語での案内など訪日外国人客への対応も考えたい。

 ■価値を次代に■

 日本遺産は地域の文化財に市民が目を向けるきっかけになる。普段目にする当たり前の光景が、実はよそにはない地域の宝物であることに気付かせてくれる。そこから文化財を大切に保全し、次代に引き継ごうとの意識も生まれる。郷土学習などで若い世代がその価値を認識できる取り組みも必要だろう。

 ただし、「保存」より「活用」を重視しすぎると落とし穴もある。観光客が増えるのはいいことに思えるが、マナーの悪さなどの悪影響も懸念される。たとえ少数でもじっくり文化財と触れ合いたいという歴史ファンにも愛され、いつまでも輝きを失わない遺産を目指したい。

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