【論説】参院選は21日、投開票される。各種世論調査では自民、公明両党は改選過半数を上回る勢い。焦点は、安倍晋三首相が宿願とする憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持するかどうか。維持すれば首相は改憲論議の訴えが支持されたとして、早期の国会発議を目指し、議論を主導することは必至だ。

 ただ、世論調査では参院選で重視するのは社会保障や経済政策であり、憲法の優先順位は低い。首相は「改憲を議論する政党を選ぶか、審議を全くしない政党を選ぶのかを決める選挙だ」と強調。野党が改憲論議を拒んでいるかのように批判する。だが、立憲民主党が「首相の衆院解散権の制約」を主張するなど議論自体は否定していない。

 改憲論議を争点化する首相の論理は強引というほかない。首相は9条への自衛隊明記について「何も変わらない」と述べている。ならば、なぜ明記するのか、国民は疑心暗鬼にならざるを得ない。安倍政権の下での改憲に過半数が反対なのも、そのためだろう。

 多くの国民が重視する社会保障を巡っても、議論が尽くされたとは言い難い。金融庁金融審議会の「老後資金2千万円不足」の報告書が明らかになって以降、年金への国民の不安が高まっている。麻生太郎副総理兼金融担当相が報告書を「なかったこと」にしたためさらに増幅した格好だ。

 参院選の各党主張は抜本改革には程遠く、国民不安は払しょくされない。問題は5年に1度、年金財政の健全性や将来給付額を示す財政検証が、前回は6月前半に公表されたものが、今回は先送りされたことだ。議論の土台となるべきデータが示されなかったため、論戦が深まらなかった。

 改選を迎える現職候補の6年間は「安倍1強」と重なり合う。引き続き安定した基盤を与えるのか、政権運営や政策の転換を迫るのかも焦点となる。消費税増税では与野党が真っ向対立し、経済対策、外交・安保、エネルギー政策など争点は多岐にわたる。有権者はどの政党に未来を託すのか、政策を吟味し貴重な1票を投じてほしい。

 気がかりなのは投票率の低下だ。本紙加盟の共同通信社の調査では、参院選に「関心がある」と答えた人は68・3%で前回2016年より約4ポイント低かった。本紙の調査でも県内有権者の関心度は60・5%で前回を3・4ポイント下回った。

 16年参院選で与党は改選議席の57%を獲得したが、選挙区での得票数は全有権者の約25%だった。衆院選も同様の傾向にある。4分の1の得票で「1強」をほしいままにしているのが実態だ。健全な民主主義の姿とはいえまい。

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