(C)宝塚歌劇団

 「花より男子」、花男といえば、原作漫画もテレビドラマも大ヒットした超人気作。「宝塚で上演してほしい!」という根強い待望論があった少女漫画の名作が、宝塚歌劇団でミュージカル化され、東京の赤坂ACTシアターで上演された。

 裕福な家庭の子女が通う英徳学園を舞台にした神尾葉子原作のラブコメディー。学園を牛耳る超御曹司の4人組「F4」は、台湾や韓国でのドラマ版を含め、イケメン俳優ぞろいだっただけに、宝塚のどんな男役が誰を演じるかが、大きな関心事だろう。

 F4のリーダー道明寺司役は、花組の柚香光。ダンスと舞台映えする立ち姿が強みで、少女漫画の再現はお手のもの。「はいからさんが通る」や「ポーの一族」といった近年の話題作で好演してきた。漫画以外でも、「エリザベート」の新人公演、秀作だった「リンカーン」等々、作品運に恵まれた人気スターだが、「嵐」の松本潤のイメージが強い道明寺は、さすがにハードルが高い気もする。

 道明寺に盾突き、学園中から敵視されてしまうヒロインの牧野つくし役は、城妃美伶。雑草魂を持つ庶民という役柄とは対照的な、ドレス姿の令嬢が似合う娘役だ。主要キャストに若手も起用された意外性のある顔合わせが、果たしてどうなるか…。

 原作の12巻までのストーリーをギュギュッと凝縮した宝塚版は、歌劇団の野口幸作による脚本・演出。幕開けから一貫して、キレのあるダンスと耳に残るメロディーで物語の世界へ引き込む。映像を駆使したスピーディーな場面転換が続くが、なにしろ道明寺とつくしがはまり役すぎて、目が離せない。

 原作の名場面から名場面へ。紙芝居を見るような慌ただしい展開の中、自分勝手な「俺様キャラ」が恋に落ちる変化と、不器用ですれ違う2人のもどかしさを丁寧に描き出す。表情の揺れや細かなしぐさ、息の合った掛け合い…。「歌う道明寺」にツッコミどころはあるものの、役になりきったフィナーレのデュエットダンスが宝塚ならではの華やかさ。身のこなしと手先の動きがきれいで、思わず、「まさかのK点越え?」とつぶやいてしまった。

 F4の面々では、美作あきら役の優波慧が手慣れたせりふ回しで扇の要に。西門総二郎役に抜てきされた入団3年目の希波らいとをリードし、初々しい演技を引き出した。入団6年目で、もの静かな花沢類役に挑んだ聖乃あすかも健闘。とはいえ、最後まで息切れせず、振り切った城妃の熱演なしには、作品自体が成立しなかった。加えて、つくしの家族や友人役まで適材適所で、しっかりと脇を固めたことも大きい。

 この仕上がりなら、往年の花男ファンも喜ぶはず…と思いながら迎えた千秋楽の翌週、主演の柚香が花組の次期トップスターに就任すると発表された。現トップの明日海りおは、100周年以降の宝塚人気をリードし、タカラジェンヌでは初めて、横浜アリーナでのコンサートまで成し遂げた“レジェンド”。引き継ぐ重圧は相当だろうが、歌を磨いて、その高いハードルを軽々と越える姿を見せてほしい。(瀬川成子・共同通信記者)

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