【越山若水】新潟・長岡藩は幕末の戊辰戦争で、家老河井継之助の指揮下、新政府軍に徹底抗戦した。失った長岡城を一時奪回するなど奮戦が知られる▼時が過ぎて、先の大戦の終戦前後、長岡の老女の元に東京から孫が疎開してきた。老女はよく、幕末の話を聞かせた。「薩長とか新政府とか明治維新とかエラそうに言っとるが、こちらが戦争したくないといってるのに、無理やり戦争をしかけおって。ありゃとんでもない悪党で強盗か山賊みたいなもんだわ」▼聞き役だった孫とは少年時代の作家半藤一利さんである。そのころ幕末史の見方は「正義の薩長、守旧派の幕府」が常識。けれど祖母は、「官軍」とは絶対に言わなかった。半藤さん自身、今も「西軍」としか呼ばない、と著書に書く(「もう一つの『幕末史』」)▼歴史は見る方向によって様子が違う好例である。ではトランプ外交を歴史はどう評するだろう。中国との貿易戦争は終わりが見えず、北朝鮮との交渉も進み具合がよく分からない。互いに危機をあおるイラン問題ではホルムズ海峡警護の有志連合を募ると言い始めた▼特定の勢力が対象でないとは建前で、イラン包囲網の踏み絵だろう。国連安保理の決議にも基づかない。イランとも仲の良い日本が簡単に乗れる話ではない。米外交、どの方向から見ても「ありゃとんでもない」と言いたくなることばかりである。

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