【越山若水】俳誌「ホトトギス」を創刊した正岡子規は、俳句以外にも短歌や評論、随筆などに才能を発揮した人物。文豪夏目漱石の盟友でもあり、日本の近代文学の隆盛に大きく貢献した。しかし結核を患い34歳で若すぎる生涯を閉じた▼そんな子規に美しい星空を詠んだ歌がある。「真砂(まさご)なす数なき星の其(そ)の中に吾(われ)に向(むか)ひて光る星あり」。砂をまいたように無数に輝く星たち。その中に自分を見つめるような親しげな星を見つける。感受性豊かな一首である▼星の連作7首の一つというが、ほかにこんな歌もある。「たらちねの母がなりたる母星の子を思ふ光吾を照(てら)せり」。幼くして父を亡くした子規にとって、母の存在は非常に大きい。母が天上の星になってわが子を見守るように、温かい光が私を照らしてくれると詠む▼これらの短歌は「日本史を動かした歌」(田中章義著、毎日新聞出版)から引用した。そして子規が大喀血(かっけつ)のため病床にあったとき、母・八重が裁縫をしながら話し相手になり、好物の焼き栗などを買ってきたことは有名な話。自著「病牀(びょうしょう)六尺」にも記されている▼千葉県の小学4年女児の虐待死事件で、父親の暴行を制止しなかった母親の有罪が確定した。本来なら星のように温かく見守ってくれるはずの母の無力に、天上の子規も涙に暮れているだろう。親の体罰を禁止する改正虐待防止法は来春施行される。

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