福井地方裁判所

 2018年5月、福井市内の実家に火を付けて全焼させ、保険金をだまし取ろうとしたとして現住建造物等放火と詐欺未遂の罪に問われた同市、会社員男性(39)の裁判員裁判の判決公判が7月12日、福井地裁であった。渡邉史朗裁判長は「被告が火災の原因となる行為をしたことは認められるが『故意の放火』とするには疑問が残る」とし、無罪を言い渡した。求刑は懲役5年。

 福井地裁ではこれまで60件を超える裁判員裁判が開かれた。地裁によると無罪判決は初めて。刑事裁判全体での無罪は16年1月以来(いずれも一部無罪は含まない)。

 判決理由で渡邉裁判長は、検察側が放火の根拠の一つとした「火元は2カ所」との主張を退け、消防の調査結果や祖母の証言から「火元は1カ所」とした。その一方「火を付けたこともないし金にも困っていない」とする男性の訴えも認めず、母親らの証言から「母親に金を無心しようとしたが連絡が取れず腹を立てたことは明らか」とした。

 警察、消防の調査結果を踏まえ、漏電や自然発火の可能性も否定し「家にいた被告が火災の原因となる何らかの行為を行った」と認定した。その上で「脅しのつもりだった」「カーテンに燃え移った」などとする火災直後の男性の発言を踏まえ「意図せず火が燃え広がったことから、そうした言葉が発せられた可能性は十分ある」と述べた。

 判決後、福井地検の中山博晴次席検事は福井新聞の取材に対し「判決内容を精査し適正に対処したい」とコメント。県警は「コメントする立場にない」とした。

 起訴状によると、2018年5月8日午前0時半~40分ごろ、祖母ら3人が住む福井市の木造2階建て住宅に火を付けて全焼させ、不慮の火災を装って5千万円の保険金の支払いを受けようとしたとされていた。

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