福井県の若狭町役場三方庁舎=福井県若狭町中央

 福井県若狭町の上中中学校の新任教諭だった嶋田友生さん=当時(27)=が2014年に長時間過重労働で自殺したのは、当時の校長が安全配慮義務を怠ったことが原因として、若狭町と福井県に約6530万円の賠償を命じた福井地裁判決について、町と県は7月12日、控訴しないと発表した。森下裕若狭町長は同日、記者会見し「判決結果を厳粛に受け止め、今後は県と一緒になって教職員の業務改善に取り組んでいく」と述べた。県も「教員の労働環境の改善にさらに努めていく」とする杉本達治知事のコメントを出した。賠償金は町が全額負担する。

 原告は嶋田さんの父、嶋田富士男さん(59)。代理人弁護士によると、公立学校の教員が長時間労働で自殺し、損害賠償が認められた判決は全国的にも異例。今後判決が確定すれば、重要な判例になるとみられる。

 会見の冒頭、森下町長、副町長、教育長らは亡くなった友生さんに対し約1分間黙とうした。町は控訴しない理由について「司法の判断や若く有望な教員を失ったことを非常に重く受け止める必要がある。学校現場の働き方改革に力を注ぐことが重要であると判断した」とした。

 判決によると、嶋田さんは4年間の臨時職員を経て14年4月、新採用で同校に赴任。1年生の学級担任や野球部の副顧問を務めていたが、同10月に車内で練炭自殺した。地方公務員災害補償基金県支部は16年9月、長時間労働による精神疾患が自殺の原因として公務災害と認定していた。

 10日の判決では、原告の父親側の主張をおおむね認定した。パソコンの使用履歴や学校の警備記録から、嶋田さんが勤務時間以外に4~6月は月128~158時間、9月は169時間在校していたと判断。初任者研修で厳しい指導もあったとし「新任教諭にとって仕事の質も量も過重だった」と指摘した。担当授業の準備、部活動指導、初任者研修の準備、保護者対応などの業務について「勤務時間外に行わざるを得なかった。自主的に従事していたとはいえず、事実上、校長の指揮監督下で行っていた」とした。

 さらに「校長は、嶋田さんが保護者対応や授業の進め方に苦心していたことの報告を受けていた。過重な業務が心身の健康状態を悪化させることは認識できた」と指摘。それにもかかわらず業務内容の把握や変更を行わず、早い帰宅を促すなどの口頭指導にとどまったことに対し「安全配慮義務を怠ったと言わざるを得ない。自殺との因果関係も認められる」と断じた。

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