【越山若水】人には耳に残る忘れられない音がある。中にはその音を文章に書き残した人もいる。福井県文書館が「音をつづる」と題したミニ展示で、日記などから拾い集めた音を紹介している▼「チヤンチヤンチヤン」と日誌の冒頭に記したのは、中国の文豪魯迅を教えた藤野厳九郎(現あわら市出身)の長男恒弥(つねや)。1928年8月2日、小学4年生の恒弥は起床の鐘に跳び起きた。家族から離れ、敦賀の児童保養所で迎えた初めての朝。休暇中とはいえ意気込みが伝わってくる▼48年6月28日の福井地震に遭遇した24歳の男性の日記には「ガラガラ」の文字。仕事を終え、福井市内の勤務先の商店を出た瞬間、天地を砕く音がした。立つこともできず「これが世界の終わりかと思う程」と記した▼日中戦争の武漢作戦で、従軍した県内の男性は詳細な陣中日記を残した。小さな手帳に細かい文字がぎっしり。戦闘が激化した38年10月21日。大空に砲声がとどろき「ゴウゴウ」と山谷にこだま、機関銃は「カタカタ」と火を吐くさまを生々しく描いた▼耳をふさぎたくなる音は現代にもある。沖縄県の米軍普天間飛行場の周辺で暮らす人たちは騒音に苦しんでいる。「上空を旋回するへリコプターがうるさくて眠れない」「勉強に集中できない」などの苦情が後を絶たない。軍用ヘリの回転音「バラバラバラ」の文字が消えるのはいつの日か。

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