【越山若水】人間の行動心理に基づいた経済用語に「心の会計」という理論がある。例えば音楽会に行くかどうかは、事前に振り分けていた予算項目「娯楽費」の残高を確かめてから決定する▼家計は光熱費や家賃、衣服、教育費など多方面にわたる。だからもっと全体に目配りが必要なのに、そうはしない。理由は単純。その方がすんなり判断できるからだ。残金が少なければ我慢するが、余裕があれば「自分へのご褒美」と称してぜいたくしても構わない▼確かに、コーヒーを買うときにガソリンや書籍、電話料まであれこれ考慮するのは面倒くさい。ダイエット中にカロリー計算を強いられると、長続きせず失敗しやすいのと同じ理屈。それより毎日の食料品やランチと同じ「食費」の範囲で計算するのが現実的である▼「アリエリー教授の『行動経済学』入門 お金篇(へん)」(早川書房)で教わった話である。どうやら費目ごとに支出を決める「心の会計」は、大ざっぱな人間にはうってつけとはいえ、概して合理的な方法とはいえない。まして今後の経済状況を考えればなおさらである▼参院選の舌戦たけなわ、有権者の関心の一つはお金の問題だろう。「老後資金2千万円不足」で年金不安は高まり、秋には消費税10%が導入の予定。米中貿易摩擦で景気にも陰りが見える。「心の会計」はもはや無理筋。家計の総点検が不可避である。

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