【論説】探査機「はやぶさ2」の、小惑星りゅうぐうへの2度目のタッチダウン(着地)予定が11日に迫ってきた。4月、金属弾を打ち込んでつくったクレーター近辺で、りゅうぐうの地下物質の採取を目指す。2014年12月に打ち上げられた、はやぶさ2の任務は、いよいよ佳境に入る。

 再着地は高度な技術の裏打ちが必要だが、はやぶさ2の目的達成に向けて避けて通れない道だ。成功すれば、太陽風や宇宙線にさらされていない小惑星の物質を、人類が初めて手に入れる。世界が注目する挑戦である。

 ■「世界初」が続々■

 はやぶさ2は今年2月、1度目の着地と表面付近の物質採取に成功した。4月には金属弾をりゅうぐう表面に打ち込み、クレーターをつくることに世界で初めて成功した。

 地下物質採取は、はやぶさ2の究極の目的。クレーターをつくったのも、地下物質を表面に露出させる狙いだ。

 既に表面物質を得ているといっても、地下物質の採取にはそれを超える意義がある。地球に持ち帰って分析すれば、表面と地下で宇宙線などの影響がどれぐらい異なるのかを初めて明らかにできる。

 着地点が、1度目と異なる場所であることも大きい。小惑星の物質構成について、場所による特徴が分かると見込めるからだ。地下からや、複数地点からの物質採取は、かつてなかった試みである。

 10日に降下を開始し、順調なら11日午前11時ごろに再着地の予定。予備の日程は7月22日からの週とされている。

 ■難易度が上昇■

 着地は2度目ながら、技術的な難易度は上がっている。1度目の着地の際、巻き上がった砂ぼこりのため、はやぶさ2のカメラの感度が下がってしまったためだ。

 はやぶさ2は低高度では自律して動くが、カメラはその際に使うもの。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は高度30メートルという表面にかなり近い所まで、はやぶさ2を地球から手動でコントロールしてカバー、その後、自律に切り替えることにしている。

 この切り替え高度は1度目より15メートル低い。従ってカメラ感度はカバーできても、捉える範囲が狭くなる。その分、はやぶさ2を着地点上空まで手動で精密に導かないといけない。再着地の成否を決めるポイントになりそうだ。

 ■挑戦こそ価値■

 JAXA内には再着地を決行するかどうか、悩みもあった。技術がどれだけ確かだろうと、地球からおよそ3億キロ離れた場所での作業のリスクはゼロにできない。最悪の場合、小惑星から戻れなくなる事態もあり得るだろう。

 再着地で得られる成果は魅力だが、既に、はやぶさ2のコンテナには1度目の着地で得た貴重な物質がある。それを無駄にする危険を冒さず、ここで地球に帰還させても十分ではないか―という迷いが生じても不思議でない。

 それを振り切ったのは科学者たちの「挑戦者の精神」だった。6月の会見でJAXAの津田雄一プロジェクトマネジャーは「はやぶさ2のミッションはそれ自体、積み重ねた技術をもとに行う挑戦。やらない、という選択肢にはならなかった」と胸を張った。

 きょうは七夕。多くの人が星や宇宙を意識する日。間近に迫るはやぶさ2の歴史的冒険を、期待しつつ見守りたい。

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