【論説】近年、紙芝居は高齢者の介護や中高生の教育現場でコミュニケーションツールとして注目され、活用されている。いわさきちひろ、加古里子と、紙芝居も手掛けた絵本作家の生誕地、越前市で2021年8月「第17回全国紙芝居まつり」が開かれる。市内の紙芝居愛好家らが誘致し、実施に向けて奮闘中だ。「読書のまち」宣言をしている越前市に新しく「紙芝居のまち」の称号を加えたい。

 仁愛大名誉教授で越前市「かこさとしふるさと絵本館」の館長、谷出千代子さんは、紙芝居の口演は「自分の言葉で他人を表現すること」で「パーソナルコミュニケーション力を高める効果がある」と分析する。また、紙芝居を子どもがつくる場合「どうやって見せようとか驚かせようかとか、子どもたちは私たちでは思いつかないような豊かな発想を見せてくれる」という。

 さらに紙芝居を見る側も、絵本だと5分と集中力が続かない子どもでも、15分以上集中するなどの効果が報告されているという。想像力を引き出し、創造につなげていく紙芝居の効果が注目され「言葉だけによるコミュニケーションが難しいような高齢者の介護現場や養護教育現場で活用されている」と話す。

 実際に、同市で紙芝居の口演などに取り組む愛好家グループ「越前らくひょうしぎの会」では、介護施設や小学校での実施が増えてきている。事務局長の土井晶子さんは、「介護施設からの引き合いが増えてきた。口演すると、お年寄りが興味津々なのが伝わってきて、やりがいがある」と話す。

 同グループらの働きかけで、2年に1度全国で開催されている「全国紙芝居まつり」の越前市開催が決まった。今年の大会は8月に山形県で開催されるが、その前回の長野大会では全国の紙芝居作家や口演家、愛好者ら約700人が集まった。20年はプレ大会も越前市で開かれる。

 まつりでは市内各地での口演会のほか、分科会も予定。土井さんらは「介護現場での口演や、学校教育における効果なども分科会のテーマに取り入れたい」と企画を進めている。

 越前市は13年に「読書のまち」宣言をし、17年には「市子ども読者活動推進計画」を策定した。谷出さんらは「越前市は、いわさきちひろ、加古里子の出身地であり、和紙の産地。紙芝居の聖地になる条件がそろっている」と話す。

 さらに土井さんらは紙芝居の演台を同市の伝統工芸、越前指物で作れないかとの構想も持つ。紙芝居は教育や介護だけでなく、観光や地場産業にまで及ぶ。大会開催を契機にしたさらなる広がりに期待したい。

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