【論説】令和初の国政選挙となる参院選がスタートした。年金問題や消費税増税など暮らしに直結する政策が争点となる一方、安倍晋三首相が目指す憲法改正も論点になる。改憲勢力が3分の2議席を維持するかどうか、今後の議論を大きく左右するとの視点を持ち、1票を投じる必要がある。

 首相は福島市で行った第一声で「憲法に自衛隊を明記することを公約に掲げている」と力説した。2016年の参院選、17年の衆院選の第一声では改憲に一切触れなかっただけに、本腰を入れる覚悟だろう。改憲は首相の宿願であり、21年9月までの任期をにらみレガシー(政治的遺産)づくりに前のめりだ。

 首相は3日の党首討論会で「与野党で3分の2の合意を得られる努力を国会で重ねていく」と述べ、日本維新の会や国民民主党に秋波を送った。維新の松井一郎代表と国民の玉木雄一郎代表は議論には前向きな姿勢を示したが、「合意」にまでは言及しなかった。

 連立を組む公明党の山口那津男代表は「憲法(改正)が直接、今の政権の行いに必要なわけではない」と慎重な姿勢を示したものの、「与野党を超えて議論を深め、国民の認識を広めることが大事だ。まだまだ議論が十分ではない」と議論自体は否定しなかった。

 各種世論調査では、過半数が安倍政権の下での改憲に反対している。与党の立候補者の間でも第一声で改憲を取り上げたケースは少ないのではないか。「改憲は票につながらない」と感じているからだ。

 福井選挙区は、共産党新人で野党統一候補の山田和雄氏、諸派新人で政治団体「NHKから国民を守る党」の嶋谷昌美氏、自民党現職で経済産業政務官の滝波宏文氏の3人が立候補したが、第一声で憲法に触れたのは反対の立場からの山田氏だけだった。

 2期目を目指す滝波氏は約10分間の第一声で、全く触れることはなかった。経産政務官として「地方の成長なくして、国の成長なし」を推進したと強調。農林水産業振興や北陸新幹線延伸など地域に向き合う姿勢を鮮明にした。改憲は公明支持者らの理解を得にくいと考えたのだろう。

 一方の山田候補は、自衛隊を書き込むだけで「何も変わらない」とする首相の手法を批判。年金・社会保障をはじめ、消費税増税や原発政策などでも反安倍政治を訴えた。首相は党首討論会で福井県のケースを上げ野党共闘を批判。これを跳ね返せるかも鍵になる。

 首相は自公で改選過半数を目標に上げたが、非改選を含めた3分の2の改憲勢力獲得も諦めていないはずだ。有権者は結果次第で改憲が加速することを忘れてはならない。

関連記事