【論説】大野市は、本年度から3年をかけて文化財保存活用地域計画(地域計画)を策定する。保存・活用に向けた方針や推進体制をまとめるもので、市民に広く知られていない地区の行事や祭り、習慣などを市民共有の文化遺産として掘り起こすことから着手する。

 過疎化や少子高齢社会の進展で文化財がいつの間にか失われてしまうことが全国で懸念され、同市にも危機感がある。伝統文化の基盤づくりは、昨年6月に初当選した石山志保市長の公約でもある。地域の文化遺産を観光や地域振興に生かしつつ、保存・活用に取り組むことが望まれている。

 初年度は民俗や文化財の調査と、それに基づく文化財のデータベース作成、文化財をテーマとした市民代表との情報交換会を予定する。これらを基に研究者や経済・観光団体代表らの協議会で計画を策定する。

 計画策定に当たり重視されているのが、文化遺産を広くすくい上げていくことだ。文化財と一口にいっても建造物や古文書、年中行事、風習、芸能、食、景観と幅広く、地域から声が上がらなければ、保存・活用の対象から漏れてしまうこともある。

 市は2014年に結(ゆい)の故郷(くに)伝統文化伝承条例を定め、16年度から「おおの遺産」認証制度をスタート。市指定文化財の基準に至らない伝統文化を認証し、保存や後継者育成のための補助金を交付している。

 市指定文化財142件と、「おおの遺産」が保存・活用の核となるが、「おおの遺産」の認証は16件にとどまる。昨年度認証の2件は、区長を対象にした町内の祭りや伝統行事に関するアンケートで市が存在を知り、申請を働き掛けた。

 風習や祭りが、長く地域行事として根付いているために、住民が文化遺産だと認識していないケースがあるという。市教委文化財課は、埋もれた地域の「宝」が少なくないとみる。

 地域計画は、今春施行された改正文化財保護法に基づくもので、文化庁に認定されれば、市の判断で文化財の一般公開や軽微な現状変更などが可能となる。保護・保存優先から利用と活用重視へ転換が図られ、県や市町に自由と責任が委ねられたといえる。

 地域の宝を大切にする取り組みは住民の郷土への愛着や誇りにつながる。地域計画策定は市民が文化遺産を見つめ直し、磨きをかけるきっかけとなるはずだ。担い手が減る中での継承は旧来の手法は通用しない。思い切った手だてが必要となるだろう。市民総ぐるみで知恵を絞りたい。

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