【越山若水】ことわざは親しみやすい表現と含蓄のある内容で、人々が生きるための指針や教訓となってきた。さらに時の権力への戒めとして、民衆たちの歯に衣(きぬ)着せぬ名言も多く残されている▼最初は少し古い日本のことわざ。「一年の兵乱は三年の飢饉(ききん)に劣る」。1年間の戦乱が起きるよりも、飢餓状態が3年続く方がまだましである…。明治時代に発行された「日本俚諺(りげん)大全」に掲載されたもので、似たような言い回しは江戸末期から存在していたという▼福島の百姓一揆の指導者も「七年の餓死に遭うとも一年の乱に遭うべからず」という農民の言葉を取り上げている。台風や冷害、地震などの自然災害で農作物の不作が相次いだ時代。それでも戦争の悲惨さやむごさは耐えがたい。これ以上ない痛烈な反戦思想である▼もっと身近なことわざだと「火で火は消えぬ」がある。力に対抗して力で応じても、争いは激しくなるばかりで収まらない。軍事力がその典型で、たとえ防衛のためでも軍隊が動けば戦争になる。決着はどちらかが戦闘に勝つか、運よく第三者の調停に頼るしかない▼ことわざ研究家、時田昌瑞(まさみず)さんの著書から引用したが、最近の世界情勢は「自国主義」の蔓延(まんえん)で経済戦争、軍事衝突の不安が消えない。“対立の火”を消すのは大勢の力が結集した満々たる水である。今週開幕するG20大阪サミットが好機となるか。

関連記事