運休した笹川流れの遊覧船乗り場=19日午後、新潟県村上市

 夏の行楽シーズンを前に震度6強の地震に襲われた新潟県村上市では6月19日、宿泊施設でキャンセルが相次いだ。「無理に来てとは言えない」。観光客を迎え入れる側は早くも出始めた影響に不安を募らせる。

 日本海に沈む美しい夕日や海水浴、温泉などを売りとする村上市には昨年度、約226万人が観光に訪れた。市観光協会によると、9カ所の海水浴場は毎年7月中旬に海開きするため、6月中旬から流木の撤去など海岸の清掃に着手。今年は作業に取り掛かろうとする直前に地震が起きた。津波による被害は確認されておらず、例年通りに海開きするという。

 ただ、既に宿泊施設には影響が出ている。市内の瀬波温泉街にある旅館「汐美荘」は建物などに被害はなかったものの、19日朝から約130人分の取り消しの連絡があった。支配人の池田隆さん(63)は「心配しているお客さまに安心していただけるように説明するしかない」と嘆息する。

 海岸の景勝地「笹川流れ」を観賞できる遊覧船も、気象庁が同程度の地震が起こる恐れがあるとしているため19日は運休し、20日以降も再開の見通しは立っていない。

 近くで民宿を経営する本間栄子さん(64)は「建物への被害はなかったが、21日に宿泊予定のお客さまからキャンセルが入った。残念だが、不安を感じる方に無理に来てくださいとは言えない」と肩を落とした。

■「大震災よぎった」

 山形県沖の日本海に浮かぶ離島・飛島(同県酒田市)は18日夜の地震で震度4を観測した。震源地に近く、津波注意報も出された。「東日本大震災が頭をよぎった」。危険を感じた島民は観光客を連れ、すぐに高台へ避難した。一方で「大きな津波は来ないから」と自宅にとどまる人もいた。

 島には約190人が暮らし、多くは高齢者だ。注意報が出た直後、市職員が広報車で島内を回り、拡声器で逃げるよう呼び掛けた。観光客十数人を含む約100人が高台にある飛島小中学校のグラウンドに避難し、毛布や非常食を手に19日未明まで身を寄せた。

 旅館経営の松本友哉さん(30)は「揺れた瞬間、震災が頭をよぎった」。避難訓練を思い出し、宿泊客や従業員と共に急いで坂を上った。海沿いに住む女性(70)も「かつて津波で港が水浸しになり、船もひっくり返った。地震だけは怖い」と声を震わせた。

 漁師鈴木敏夫さん(64)は強い揺れで外に飛び出すと、海面が30センチほど低いと感じた。漁師仲間と10隻ほどで沖に出たが海は静か。1時間半で港へ戻った。「一睡もできなかった」と疲れた表情で振り返った。

 一方、「脚が悪く、高台まで歩くと30分はかかる。大した津波は来ないと思う」と話す1人暮らしの80代女性のように、避難を見送った人も少なくない。市幹部は「島民同士の助け合いが必要だ。訓練を重ね、避難の重要性を共有してもらうしかない」と指摘した。

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 6月18日午後10時22分ごろ、新潟県下越で震度6強を観測した地震で、福井県坂井市三国町中央でも震度1を観測した。

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