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 『ベイビー・ドライバー』でブレイクしたアンセル・エルゴート主演の多重人格サスペンスだ。1つの身体に宿った2つの人格であるジョナサンとジョンは、脳に埋め込んだタイマーによって12時間で入れ替わるように設定され、1つの身体を共有している。それをジョナサンの視点からだけ描くスタイル自体にそれほど新味はないが、このスタイルを生かすために採用されている2つの技法がなかなか面白い。

 1つは、サスペンス映画としては正攻法とはいえない被写界深度の浅いレンズの多用。『パニック・ルーム』のような傑作もあるにはあるが、やはりディープフォーカスの歪んだ画面の方がサスペンスでは効果を発揮しやすい。本作ではあえて、ピントの合っている箇所を少なくして情報量を減らすことで、観る者の不安をかき立てるのだ。ただでさえ我々には1日の半分しか記憶がないジョナサンと同じ情報しか与えられていないわけだから、効果は大きい。

 もう1つは、“黒味つなぎ”。ジョナサンの記憶と記憶の継ぎ目をVTRの録画と録画の間に生じる画像の乱れのような黒味で表現していて、それ自体も人間の記憶がまるでテープに記録されたデータのように感じられて不気味なのだが、その黒味の頻度がどんどん増えていく怖さときたら! 物語に逃げ道(別の選択肢)がないため途中でオチが分かってしまう欠点こそあるものの、多重人格サスペンスに新機軸を打ち出したと言えるかもしれない。★★★☆☆(外山真也)

監督:ビル・オリバー

出演:アンセル・エルゴート、パトリシア・クラークソン

6月21日(金)から全国順次公開

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