【論説】「眼育」と書いて「めいく」と読む。鯖江市が本年度から本格化させるプロジェクトだ。目の健康に対する意識を子どもの頃から高める狙いで、幼少期の視界不良の早期発見、治療を柱とする。国内最大の眼鏡産地として「目に優しいまち・鯖江」を全国に発信していく考えだ。

 人間の視力は就学前後の時期までに、ほぼ完成するといわれる。弱視の治療は目の成長時期を逃すと難しくなるため、視界不良を早期に発見することが大事になる。

 ただ一般に、子どもの視覚異常は見つけるのが難しい。例えば聴力は、呼び掛けに反応しなければ、周囲が「おかしいな」と感じる。しかし視力の場合、弱い子どもも近くは見えているため、身近にいる大人でも異常に気付きにくい。

 鯖江市がまず力を入れるのは、幼児の目の検査だ。3歳児健診や就学前健診で視力検査が行われる際、市は独自に屈折検査を追加実施する。これにより遠視、近視、乱視といった屈折異常が発見できる。異常が分かれば眼科を受診し、眼鏡を掛けるなどの治療により改善が見込める。

 3歳児、就学前の両健診の間に、4歳児対象の検査もプロジェクトに組み入れた。成長段階の途中で発症しても対応できるよう、きめ細かくケアする狙いだ。

 このとき利用してもらう想定で市は、独自のキットを作った。レッサーパンダのお面というかわいらしいデザインで、保育園や家庭において遊び感覚で検査してもらう。正確な視力の判定まではできないものの、保育士や保護者らが見え方の異常に気付くことができる。検査する大人にとっても、目の健康の大切さを理解するよい機会になる。

 こうした検査は、視能訓練士を育成する学科がある新潟医療福祉大(新潟市)の石井雅子教授と共同で進める。石井氏とは、子どもの視力低下とスマートフォン利用との関連性の調査も一緒に行う。成果がまとまれば、鯖江産地の技術を生かしてスマホ用眼鏡を開発したり、さらに新しいビジネスにつなげたりする可能性も出てくるだろう。

 こうした「目に優しい」取り組みを、鯖江を拠点に行うことに意義がある。眼鏡は視力を矯正する道具であるとともに、目の健康を守る役割もある。眼鏡の産地だからこそ、目に関する事柄に幅広く関わっていくというアピールは説得力を持つ。福井市出身の医師、石塚左玄が提唱して広まった「食育」と同様、「眼育」が鯖江から全国に広まっていくのを期待したい。

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