【論説】職場のハラスメント対策の強化を柱とした女性活躍・ハラスメント規制法が成立し、事業主に相談体制などパワハラの防止対策を取るよう初めて義務付けた。ただ、罰則を伴う禁止条項はない上に、今後示すとしているパワハラの具体的行為にしても線引きの難しさは否めず、実効性には疑問符が付く。

 厚生労働省の労働局に寄せられたパワハラなど「いじめ・嫌がらせ」相談は、2002年度の約7千件から17年度には約7万2千件と10倍以上に増えている。セクハラやマタニティーハラスメントと同様に、人の尊厳を傷つける人権侵害以外の何物でもない。

 推進法は「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により就業環境を害する」とパワハラを定義したが、職場の環境を悪化させるだけではなく、被害者が休職や退職を強いられ、自殺に追い込まれたケースも後を絶たない。

 事態の深刻化でようやく法規制に動いたことは一歩前進とみる向きもある。だが、労働者側が強く要求した罰則付きの禁止規定は見送られた。「適正な指導との境界が曖昧」との企業側の主張に配慮したためだ。これでは07年に禁止規定なしに対策を義務付けたセクハラの二の舞いになるのは避けられない。

 17年の厚労省の調査でセクハラの防止に「取り組んでいる」と回答した企業は7割にとどまり、具体策として4割が「窓口設置」を挙げたが、「担当者への研修実施」は1割だけ。被害を受けた女性の6割強が泣き寝入りしていたという。被害者救済の観点からセクハラは無論、パワハラ規制も再検討すべきだ。

 厚労省の検討会はパワハラを▽暴行など身体的な攻撃▽脅迫や暴言など精神的な攻撃▽邪魔者扱いや無視といった人間関係からの切り離し▽できないことを強制する過大な要求▽程度の低い仕事を命じる過小な要求▽私的なことに立ち入る個の侵害―の6類型に分類している。

 これを基に、どういった言動が「業務の適正な範囲」を超え、パワハラに当たるか、厚労相の諮問機関である労働政策審議会の議論を経て具体的な指針が策定される。確かに「過大な要求」「過小な要求」といった項目は、指導と区別しにくい面があるだろう。指針に向けた議論が難航する可能性もある。

 働き方改革の必要性を痛感させた広告大手電通の新入社員が過労自殺した問題では、パワハラも指摘された。法律の実効性を高めるためにも厚労省は分かりやすい指針を示す必要がある。企業はもとより、一人一人が自覚し行動することが求められている。

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