【論説】「児童相談所が通告を受けた全ての虐待情報について北海道警と共有する」。道が、この運用を始めると発表したのは今年4月17日だった。東京都目黒区や千葉県野田市の女児虐待死事件を受けて考えたはずの対応強化策である。しかし、実際は全く機能していなかった。札幌市で起きた2歳女児の衰弱死事件に関して、道警も市児童相談所も虐待を疑う情報を得ていながら、助けることができなかった。

 虐待事件で加害者が責めを負うのは当然だ。だが、悲惨な事件が起こるたびに児相、警察、学校など当局の不始末が繰り返し明らかになっている事実もまた、許し難い。厚生労働省は児相と警察の連携を調査するという。遅きに失しているが、この際、行政の問題点を白日の下にさらし、根本から体制をつくり直してもらいたい。

 札幌市などによると、市児相には昨年9月に住民から最初の通報があった。このときは職員が面会に訪れている。

 問題は、今年4月5日の2回目の通告後の対応だ。「火が付いたように泣き叫ぶ声」や、何かにぶつかるような物音が続くことに、近隣住民が「いたたまれなくなって」市児相に連絡している。ところが市児相は電話連絡だけで問題なしと判断。目黒区の事件後、政府から全国に通知されていた「通告から48時間以内に安全確認する」とのルールを無視した。5月の道警からの情報は3回目の通告だったことになるが、それでも市児相は動かず、道警の面会に同行しなかった。

 事件発覚後の市児相の説明は、道警に同行しなかった理由が変遷。どちらに問題があったのか道警と言い分が食い違い、本来望まれる連携の姿から程遠い。

 道警の現場対応も納得できるものではない。2歳児がヘアアイロンを踏んだ、との母親の説明に説得力はあったのか。やけどするほど熱くなっているアイロンがなぜ、誤って踏むような場所にあったか、質問はしたのか。何度も通告があった事案なのに、頬のあざを虐待でないと判断した根拠は何か。道警にも説明責任はある。

 ただ、考慮しなければならないのは、市児相が言及している人手不足だ。過去の虐待事件でも、行政対応が問題になるたびに、児相の体制の不十分さは指摘され続けている。警察や学校なども、人員は十分、という組織はないだろう。

 家庭の体罰を禁止する法改正が近く成立見通しだが、現状では法の実効性を保ち、子どもを虐待から守ることなどおぼつかない。政府は地方の実態調査も必要だろうが、体制整備に向けた主体的な動きに早急に乗り出さなければならない。

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