【論説】フェンシングの世界ランキングで、男子エペの見延和靖選手=武生商高出身、ネクサス=が2位に浮上。同種目で日本人最高だった3位を更新した。今や日本を引っ張る存在である。「史上最強のフェンサー」という究極の高みを目指す姿はさながら、求道に生きる剣豪のようだ。

 見延選手は越前市生まれ。中学時代はバレーボール選手だったが、父の勧めもあってフェンシングに転向。武生商高で活動し、めきめきと力を付けた。

 フェンシングは、日本では上半身が有効面となるフルーレが主流とされている。しかし、本場欧州で競技人口が最も多いのは全身が有効のエペ。世界で戦う相手は強敵が集まるだけに、見延選手の世界ランク2位には価値がある。

 2015年に日本のエペ勢としてワールドカップ(W杯)で初優勝。16年のリオデジャネイロ五輪では6位入賞でメダルに届かなかったが、18年からは快進撃が続く。同年のW杯個人で2勝を挙げ、今年3月、W杯より格上のグランプリ大会で、エペで日本人初の優勝を果たし、5月には2勝目を遂げた。

 がぜん期待が高まるのが東京五輪のメダル獲得だ。団体での五輪出場枠は、来年4月時点の世界ランク上位4位までと、世界4地域の各1位に与えられる。その他、個人参加枠もあるため、見延選手の場合は今のランキングを維持できれば出場は当確とみられている。

 とはいえ、日本チームとしての出場を果たすために、エースである見延選手には重圧もかかるだろう。日本は現在8位。アジア・オセアニア地域では2位で、出場枠までもう一歩。鍵は1位の韓国を逆転できるかどうか。13日に東京で開幕するアジア選手権は重要な戦いになる。

 日本男子の象徴的な存在だった太田雄貴氏がリオ五輪で引退。31歳の見延選手はポスト太田を担う立場だ。ベテランとして若手育成にも積極的にかかわり、アドバイスを送ることも多い。

 競技に生かせると思えば、日常生活からユニークな鍛錬方法にも貪欲に取り組む。剣先の感覚を磨くために、100円ショップで購入したマジックハンドを手放さないという。

 五輪は、東京の次や、その次までも見据えているという見延選手。五輪の金メダルさえも、目標に掲げる「史上最強」への道程の一つにすぎないのかもしれない。どこまで強くなるのかと、期待は膨らむばかりだ。

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