心臓修復パッチのイメージ画像(福井経編興業提供)

 ニット生地製造の福井経編興業(フクイタテアミ、本社福井県福井市西開発3丁目、高木義秀社長)は6月11日、実用化を目指している心臓修復パッチの臨床試験を開始したと発表した。5月に生後4カ月の乳児に心臓修復パッチを使った手術を実施、経過は良好で6月6日に退院した。今後、臨床試験を重ねて安全性などに問題がないかを実証していく。2022年の薬事申請を目指す考えで、実用化に向けて大きな一歩を踏み出した。

 心臓や心臓血管手術に使用される修復パッチは、同社と大阪医科大、帝人が共同で開発に携わり、直木賞作家池井戸潤さんの小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のモデルになった。糸の配列と編み組織の組み合わせなどに工夫を重ねた特殊な生地で、従来品に比べ高い強度と伸長性を兼ね備えている。成長に伴って心臓が大きくなる子どもに適しており、再手術のリスクを低減できるという。

 初の臨床試験は5月27日、岡山大病院で心室中隔欠損症を患う乳児に対して行われた。大阪医科大によると、同欠損症は右心室と左心室を隔てる「心室中隔」という筋肉の壁に穴が開いている先天性の疾患で、手術では修復パッチを壁代わりにして穴をふさいだ。手術後の経過は良好で、乳児は今月6日に退院。今後は外来で経過観察するという。

 今回の手術も含め、臨床試験を30件実施して安全性などを確かめてから薬事申請に移る。修復パッチの開発事業は、厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象に指定されていることから、薬事申請後の審査などで優先的に取り扱われる。これによって審査期間の短縮や早期の販売開始を見込んでいる。福井経編興業の高木社長は初の臨床試験について「我々の素材を使うことを理解してくれたお子さんのご両親に感謝したい。実用化されれば、子どもの身体的負担や親の経済的負担を軽減できるようになる。実績を積んで1日も早く販売できるよう努力したい」と話している。

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