裁判は時間もかかります。裁判の期日は60日に1回程度が多いと思いますが、夜間は不可能、土日祭日も休み。忙しさも夫婦のすれ違いの1つなのに、裁判は解決どころか、過去の楽しかった思い出や、頑張った思い出も消してしまうほど、悲しく、ひどい方法なのです。

裁判を回避できる「ADR調停」という解決方法

夫婦が別れるとき、協議離婚でもなく、裁判でもない、中間的な方法はないものでしょうか。実は「ADR(裁判外紛争解決手続)」という方法があります。

ADRとは、本来、裁判所で行う調停を、経験を積んだ専門家の仲裁のもとで話し合い、解決する方法です。裁判は紛争性が高く、時間も費用もかさみがちです。しかしADRにすれば、夜間・土日祭日も対応が可能で、費用も比較的安く抑えられます。話し合いは非公開。プロ中のプロに仲裁してもらえることから、利用者数は右肩上がりで伸びています(注2)。

夫婦関係等の紛争を専門的に扱う「家族のためのADRセンター」(東京)の小泉道子代表は、次のように話します。

「ADRをご存じない方がまだまだ多いのですが、実際に利用した方からは大変喜ばれています。私は以前、家庭裁判所調査官をしておりました。調査官時代は、利用者からは感謝より不満の声が多かったと思います。それは、自分の思いより裁判所に説得されたという感覚になるからでしょう。ところが、ADR民間事業者として開業して以来、利用者の方々からお菓子などをいただくようになりました。ADRの利用料金は初回申し立てに1万円、その後ご夫婦それぞれから1回話し合いをするごとに1万円ずついただきます。平均的には3~5回で終了しますから、費用ご負担は2人で10万円前後。“こんなに安いサービスじゃないでしょう”という方もいらっしゃいます。

実際の方法は、双方のお話を聞いて、条件をまとめていきます。スカイプやメールでもOKです。早ければ2週間くらいで解決します。この利便性は大変喜ばれますね。まとまったところで成立調書(合意書)を書きます。この書類は無料。ただし、法的効力がないので公正証書を同時に作成し(公正証書 代行費用)、盤石にしています」

ADRでは、DV被害者などは別日で調停ができます。今年3月20日、東京家庭裁判所の玄関付近で、調停中の女性が夫に刺されて死亡した事件が起こりました。2人とも調停日で裁判所に来ていたとのこと。調停は同日に行うため、控室は違っても、争い中の夫婦が顔を合わせる機会があるのです。ADRだったらそれを避けることもできます。

いろいろな面で「コストパフォーマンス」が高いADRは、これからの時代の救世主となるのではないでしょうか。前出の小泉代表は「ADRを利用する人の中には、長年離婚を考えていたものの、誰にも言えず、胸の内に秘めているだけだった人も多い」と言います。

「裁判所に行く勇気もなければ、お金もないからです。自分が我慢するしかないという気持ちを抱えて生きている人もいる。しかしADRを利用して解決できた後、“ADRが私の人生を変えてくれた”“対人関係の基礎を学び直した”などという人が少なくありません」

コミュケーションが苦手な人も多い現代、大げさな裁判ではないプロの仲裁で問題解決するケースも多いと思います。小泉代表は「ADRを知ってほしい」と話しています。相談者の人生を豊かにできるこの制度、必要な方々に届いてほしいです。(寺門 美和子 : FP、夫婦問題カウンセラー)

(注2)ADR調停は「ADR法」(裁判外紛争解決手続の利用促進に関する法律)の中で管理されています。

法務省の『かいけつサポート:認証紛争解決サービス』というパンフレットに詳細が書かれていますが、ダイバーシティ化する内外の社会経済情勢の変化に伴い、設定された制度のようです。ADRができるのは、法律で定められた厳格な基準をクリアしている、法務大臣の認証を受けた機関のみ。最も機関数の多い東京で33機関。北海道から沖縄まで(大分県を除く)174カ所。取扱事件は、夫婦関係・相続・知的財産・労働関係紛争・土地問題などさまざまです。
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