【論説】健康被害などを懸念する地元に対して誤ったデータに基づく調査結果が示され、さらには説明会では職員が居眠りしていたという。これでは住民理解は得られるはずもない。単純な「ミス」と弁明しているが、計画ありきが疑われても仕方がない。

 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画を巡り、陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)を「適地」とした防衛省調査に誤りが見つかり、地元はずさんな調査内容に態度を硬化させている。

 誤りがあったのは先月公表した調査結果で、新屋演習場を除く東北地方計19カ所の検討対象場所のうち、9カ所でレーダーを遮る山などを見上げた角度である仰角が実際より過大に記載されていた。

 原因は、山の高さと山までの距離の縮尺が異なる地図をそのまま使っていたためとされる。中には実際の仰角は約4度なのに約15度と記されていた。現地にいけば分かったはずである。「ミス」では済まされない手抜きそのものだ。「19カ所は配備に向かず、新屋演習場が最適だ」とした結論自体撤回すべきだ。

 今月8日の住民説明会では、住民から「職員の一人が居眠りしている」と指摘され、「われわれは人生が懸かっている」などと怒号が飛ぶ一幕もあったという。テレビ映像などでも確認され、翌日の説明会で上司が認めて陳謝した。

 住民が怒るのも当然だ。新屋演習場と住宅地は700メートルしか離れていないため、電磁波による健康被害を危惧。加えて有事の際、一帯が攻撃目標にされかねない不安もある。懸念の払しょくにつながるはずの調査結果の誤りは不信感を増幅させるだけだ。

 陸上イージスは山口県のむつみ演習場(萩市、阿武町)も配備先に選定されている。西日本の調査が適正に行われたのかも精査する必要がある。

 沖縄の辺野古新基地を巡っても軟弱地盤が指摘される中、防衛省は明確な調査結果や工法などを示さないまま、計画ありきで埋め立てを進めている。

 陸上イージス2基の導入にはミサイルを含め6千億円の巨費が必要とされている。発射実験などを行う試験施設の建設に関する米側との協議次第で追加費用が生じる可能性がある。

 政府は国会審議に付さず、米国で購入を表明した経緯がある。対日貿易赤字を非難するトランプ米大統領のご機嫌をとるためとの指摘は否めない。

 一方で、配備計画に対してロシアは苦言を呈しており、北方領土交渉への影響も取り沙汰されている。真に安全保障に資するものなのかの観点からも政府には再考を求めたい。

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