【越山若水】赤やピンク、黄色に白…。通勤の道すがら、家々の庭先で色とりどりの花を見かける。タチアオイである。真っすぐな茎は人の背丈ほどで、花は下から上に向かって順番に咲いていく▼福井県出身の俳人、皆吉爽雨にこんな一句がある。「花々の前に雨ふる葵(あおい)かな」。その風詠のごとく、タチアオイは雨と因縁が深い。昔から花の咲き始めは梅雨入り、咲き終わりは梅雨明けの大まかな目安とされてきた。それゆえ別名「梅雨葵」とも呼ばれている▼たまたまの感もあるが、気象庁はきのう北陸地方の梅雨入りを発表した。平年より5日、昨年より2日早い。同時に東海、関東甲信、東北南部も入梅し、九州北部や中国、近畿に先行する珍しい事態に。加えて前線が活発化し、西日本を中心に激しい雨に見舞われた▼昨年7月の豪雨で甚大な被害が出た広島県では、一部で半日で100ミリを超える大雨を記録し、土砂災害の危険性が高まった地域に避難勧告を発令した。先月運用が始まったばかりの「大雨・洪水警戒レベル(5段階)」で、緊急避難を要する「レベル4」となった▼季節の移ろいに情緒を感じる日本人は、梅雨入りもつい風物詩として捉えがちである。しかし気象庁は防災情報として発表している。「大雨の時期に入るので備えをしてください」。まして最近の異常気象である。手抜かりはあまりに無謀すぎる。

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