【論説】2020年卒の大学生や大学院生の採用に向けた経団連加盟企業の選考が始まっている。経団連のルールに基づく就職活動は今年限り。来年以降については政府がルールを主導し、当面は現行の日程が維持されるとしているが、企業の対応次第で就活風景は一変しかねない。

 というのも、経団連と大学でつくる産学協議会が4月に「新卒一括採用に加え、複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべきだ」と提言する中間報告をまとめたからだ。新卒一括採用を残しつつ向かう先は通年採用だろう。

 経団連の中西宏明会長は記者会見で「一括採用で入社した大量の人を効率よくトレーニングする考え方は、今の時代には合わない」と指摘。IT化やグローバル化に対応できる人材を育てる仕組みづくりが課題と訴えた。

 確かに、どんな仕事かもよく分からずに入社して、3年以内で辞めていくケースが後を絶たない。ミスマッチは一括採用の大きな歪(ひず)みといえる。海外に留学している学生が夏に帰国しても既に採用時期が終了していて不利になるといった弊害も指摘されている。

 中間報告は通年採用への一本化を提言しているわけではなく、企業の多くは当面、新卒一括採用を継続するとみられる。ただ、既に通年採用を導入している外資系やIT企業などに加え、経団連加盟企業に広がれば影響は大きい。

 通年採用の拡大が進むと企業はより多様な人材を獲得でき、学生にとっても就職の機会が増えるメリットがあるだろう。一方で就職活動がかえって長期化し、学業に影響が出る恐れも否めない。

 中間報告では学業に専念できる時間の確保を挙げているが、学生からは「企業の選考がいつ始まるのか分からず、就職活動を前倒しせざるを得ない」といった不安の声が上がっている。

 産学協議会は今後、作業部会で具体的な仕組みづくりを検討していくという。多様な採用形態に混乱なく移行させるための方策や、ミスマッチ回避へインターンシップの活用など丁寧な制度設計が欠かせない。

 中小企業への配慮も忘れてはならない。現状でも中小企業の採用活動は大企業の後発を余儀なくされ、人材確保を満たせていないケースが多い。通年採用の拡大で一層苦戦を強いられかねない。

 採用の多様化は、終身雇用を今なお主流としている企業にとって雇用慣行の大幅な見直しなどを迫られ、雇用の不安定化を招く恐れもある。転職しやすい環境の整備も重要になる。経済界や大学、政府は影響の大きさを踏まえ制度づくりを進める必要がある。

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