巣から顔をのぞかせるコウノトリのひなと親鳥の雄=6月2日、福井県坂井市内(古木仁さん撮影)

小学生の女児がつけているコウノトリ観察日記

 ペアのコウノトリが福井県坂井市内の電柱の上に営巣してから1カ月半。待望のひな誕生が6月3日、正式に発表された。静かに見守ってきた集落は喜びに包まれた。「巣を残してほしい」との住民の思いに応え、コウノトリが感電しないよう電気系統を迂回(うかい)する対応をした北陸電力の担当者の間にも笑顔が広がった。先月誕生した福井県越前市のひなが巣立ちに至らなかったこともあり、集落はひなが元気に育つよう願いつつ、巣立ちのときを待っている。

 コウノトリが集落内に営巣を始めたのは4月20日。22日には十分な大きさになった。巣を撤去するかどうか、同日夜に区長(69)と北陸電で話し合いが持たれた。24日には雨の予報が出ていて感電のリスクが高まるため、対応するなら23日しかなかった。「何とか巣を守りたい」という住民の思いを感じていた区長は、残してほしいと伝えた。北陸電は同日集落一帯を一時停電にして、変圧器を別の電柱に移設した。

 巣は集落内のほとんどの家から見える位置にある。刺激しないよう申し合わせ、近くを通るときも、ちらっと目をやる程度にとどめた。カラスが巣に近づくと「卵は大丈夫か」と住民から区長に連絡があった。コウノトリの観察日記を毎日、愛情深くつづる小学生の女の子もいる。

 電柱付近は集団登校の児童の集合場所だが、「そういうことも含めて来てくれたのだろう」(区長)と場所は変えていない。コウノトリは集落の日常にとけ込み「みんな自分たちの孫や娘を見ているような気持ち」だという。近くの駐在所の警察官もパトロールで付近を通るときは観察しに来た人がトラブルを起こしていないか気に掛けるなど、地域一体となって見守ってきた。

 ひな誕生の発表を受け、観察日記をつけている女児は「目の周りが赤くて最初はちょっと怖かったけれど、ずっと見てたらかわいくなって。ひなが生まれてもうひとつ幸せを運んできてくれた感じがする。大きく羽ばたいていってほしい」と満面の笑みを見せた。

 「この集落を選んで巣作りしてくれて、せっかくの機会だからと受け入れようと決めた。無事に巣立ってくれたらこんなうれしいことはない」と区長。北陸電の担当者は「引き続き地元の方と共に見守りたい」と話した。

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