【論説】川崎市で私立小学校のスクールバスを待つ児童らが襲われた事件は、その後の調べで犯行直後に自ら命を絶った男が自宅から現場まで直行し、直前に手袋を着けるなど周到な準備をしていたことが分かった。動機などは警察の捜査を待つ以外にないが、事件を二度と起こさないためにどうすべきか、社会を挙げて対策を考え講じる必要がある。

 学校の安全に関しては、2001年に8人が殺害された大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件以降、校門の施錠や防犯カメラの設置など不審者の侵入に対する対策が強化されてきた。通学路ではボランティアやPTAによる見守り活動なども広がっている。

 学校保健安全法は各校に安全計画や危機管理マニュアルの策定を義務付けている。15年度に通学路の安全点検を行った小学校は全国で99・8%、中学校は93・8%に上ったという。子どもら自身に通学路の「安全マップ」を作成させた小学校も55・1%ある。

 それでも大人の目が届かない「死角」があるのが実情だろう。05年に栃木県で下校中に小1女児が行方不明になり、殺害された。昨年5月には新潟市で帰宅途中の小2女児が犠牲になった。これを受け文部科学省は「登下校防犯プラン」を改めて作成。学校や地域住民、警察などが連携し、犯罪が起きやすい場所を確認して警戒するよう求めた。

 プランは「児童生徒を極力一人にしない」観点を重視しているが、今回の事件は徒歩通学よりも安全と考えられてきたスクールバスを利用する児童が狙われた想定外の事件といえる。事件後、全国的に父母が子どもに付き添うケースが増えたとされるが、共働き家庭が増える中、限界もある。登下校中や下校後の子ども全てに目を行き届かせるのは極めて難しい。

 児童が犠牲になった私立小は警備員を増やす方針を示した。ただ、公立小だと予算面から困難視されている。教員による見守りも人員に限りがあり、「働き方改革」との両立からも問題がある。専門家は「地域の力が不可欠だ」と指摘する。自治体が主導し、学校も地域に積極的に協力を求める必要があるだろう。

 大津市で散歩中の保育園児ら16人が死傷した痛ましい事故が起きている。通学路での交通事故も後を絶たない。30日には永平寺町で警察官や住民が不審者や車の無謀運転に目を光らせる取り組みがあった。こうした活動に住民が積極的に参加し、活動の輪を広げていくことが欠かせない。

 安倍晋三首相は関係閣僚会議で登下校時の安全確保の徹底などを指示したが、自治体や現場任せにすることなく、予算面を含めあらゆる対策を講じるべきだ。

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