【論説】憲法違反と断じながら門前払いでは、被害者である原告が腑(ふ)に落ちないのも当然だろう。

 旧優生保護法(1948~96年)の下で知的障害を理由に強制不妊手術を施された宮城県の60、70代の女性2人が国に計7150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は旧法は違憲との判断を示す一方で、国が救済立法をしなかった責任を認めず、原告の請求を棄却した。

 判決は憲法13条に触れ、子を産み育てるかどうかを意思決定する「リプロダクティブ権」を個人の基本的権利と認定。その上で「不合理な理由で子を望む者の幸福を一方的に奪い去り、個人の尊厳を踏みにじる」強制不妊手術は「憲法に違反し、無効だ」とした。

 リプロダクティブ権を認めた判決は日本ではこれまでなく、その意味では画期的だろう。裁判長は昨年6月の口頭弁論で「憲法判断を回避しない」と発言していただけに、有言実行ともいえる。

 その一方で、国の主張をほぼ認める内容が続く。被害者は国家賠償法で補償を求めることができるから救済立法の義務はなかった、さらに手術は40年以上前で提訴時に請求権が消滅する除斥期間20年を経過―を挙げた。違憲の法により手術励行の旗を振った国の責任がなぜ問われないのか。原告ならずとも理不尽さを感じざるを得ない。

 原告は強制手術について「自己決定権や法の下の平等などを侵害しており、憲法違反」とし、国は救済措置を怠ったと主張した。80年代後半に旧厚生省内で、人道上問題があるとして旧法改正の手順を示す文書が作成されたり、廃止が提案されたりした。2004年には厚生労働相が補償に関し「考えていきたい」と答弁するなど、旧法廃止や救済法などの措置を取る機会は度々あった。

 今年4月に与野党の国会議員による議員立法で強制不妊救済法が成立、即日施行された。「反省とおわび」の主体は「われわれ」であり、国の責任は曖昧だ。一時金320万円には多くの被害者が不満を募らせている。法案審議で被害者からの聞き取りは一度もなく、問題が夏の参院選に影響しないように成立を急いだとされることが不信を増幅させたといえる。

 判決は除斥期間の適用を認めながら「本人が手術の客観的証拠を入手するのは困難で、20年が経過する前に賠償請求権を行使するのは困難だった」とも述べている。国と国会はこうした事情にも向き合い、被害者の思いに寄り添う必要がある。不妊手術を巡る訴訟は他にも全国6地裁で起こされている。判決内容を精査し、被害者との溝を埋める努力が求められる。

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