【越山若水】インターネット全盛時代、さすがに「@」の記号を知らない人はいないだろう。日本では「アットマーク」と呼ぶが、実はこれほど世界的に普及しながら、共通の名称がないらしい▼スペインやポルトガル、フランス語では質量・体積の単位「アローバ」を使用する。英語は「アットサイン」と日本に近い。ところがオランダは「猿の小さな尻尾」、デンマークは「象の鼻のa」、ハンガリーでは「うじ虫」と見た目重視、冗談のような名前である▼さらに「記号とシンボルの事典」(S・ウェッブ著、青土社)から引用する。「@」は12世紀のビザンチン帝国の文書に初登場し「アーメン」の「A」の代用だった。その後、北欧商人が「each at=1個いくらで」の短縮表記として工夫し普及したとされる▼では会計分野の記号が、なぜネットの世界に広まったのか。約半世紀前の米国、コンピューター同士でメッセージを交換する技術が完成し、電子メールの先駆けとなった。そのときユーザー名とマシン名を切り離すため、キーボード上で使用頻度の低いものを選んだ▼それが「@」である。少し控えめな記号は今やメールアドレスに不可欠で、全世界38億人にも上るユーザーの通信や対話をサポートしてくれる。つないだメールが詐欺に悪用され、過激なツイートで争いを生むようでは、記号「@」も気の毒である。

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