【論説】俳聖・松尾芭蕉の「奥の細道」の旅から今年で330周年。全国のゆかりの地ではこれを記念した事業が次々行われる予定で、「杖措(つえお)きの地」として知られる敦賀でも複数のイベントや展示会などが展開される。敦賀の俳句文化発展や観光振興のきっかけとして生かしたい。

 芭蕉は江戸時代の1689(元禄2)年、東京・深川を出発し東北、北陸を旅しながら俳句を詠んだ。その紀行文が奥の細道だ。最後の目的地として中秋の名月を見る舞台に敦賀を選び、旧暦8月14日から4日間ほど滞在。気比神宮や金前寺(金ケ崎町)、色ケ浜を巡り「月清し遊行のもてる砂の上」などを詠んでいる。気比神宮は2016年、芭蕉に関連する国名勝「おくのほそ道の風景地」に選ばれている。

 節目の年に当たり、全国の芭蕉や奥の細道ゆかりの地は地域活性化につなげようともくろむ。敦賀市を含む33市区町は「奥の細道紀行330年記念事業実行委員会」を立ち上げ、各種事業に取り組み始めている。

 実行委の事業では、芭蕉の旅のむすびの地である岐阜県大垣市が中心となる「PRキャラバン隊」や、33市区町を結ぶスタンプラリー、俳句の支援アプリ開発などが予定されている。各自治体が連携を取り、全国に奥の細道ブームを巻き起こす狙いだ。

 自治体単独で行う事業も多い。敦賀では、テレビ番組で人気の俳人夏井いつきさんの句会ライブが7月末に開かれる。市立博物館特別展、市立図書館の関連書籍展示などのほか、敦賀俳句作家協会主催の全国俳句大会などもあり、俳句の世界を身近に感じることができる1年となりそうだ。

 俳句は国内だけでなく海外でも人気が高まっている。ただ、地域の盛り上がりなくして誘客は難しい。33市区町の中心的役割を担う大垣市も以前は、芭蕉が旅を終えた地であることが市民にあまり知られていなかったという。そこで2012年に記念館を開設したほか、毎月イベントを開くなどして、周知、誘客を図ってきた。今では記念館に年間20万人超が訪れるようになり、全国へ一定のアピールができていると自負する。

 敦賀には芭蕉像や句碑などのほか、旅に使ったとされる杖、奥の細道の決定稿で国重要文化財「素龍清書本」など、地域に活力をもたらす資源や遺産は多い。330周年を機に、まずはイベントなどを通して芭蕉の足跡を見つめ直し、足元に眠る貴重な“宝”を再認識する機会としたい。

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