今年1月の「ライスボウル」に向けて記者会見する関学大の鳥内監督=2018年12月26日、兵庫県西宮市

 この春から、今季限りでの退任が決まっている関西学院大学アメリカンフットボール部の鳥内秀晃監督にまとめてインタビューをしている。

 鳥内監督の話を聞いていると、関東と関西の言葉、発想の違いが随所に出てきて、面白い。

 「よう考えるんは“損得”やね。コーチたちから練習やプレーの計画を聞いて、よく言うのは『こっちのプレーの方が得やろ』ということ。これは関西独特のものかもしれへんね。東京で生まれ育って人たちは、『こっちのプレーの方がいいだろう』という言い方をする。それ、ウチらはちゃうねん。損得で考える」

 もう一つ、印象的な言葉は「セコい」だ。

 関西の芸人がよく使うので全国区になった言葉で、どちらかというとネガティブなイメージがついてまわる言葉だ。

 「お金にうるさい」とか「ちまちましている」というニュアンスが多く含まれているように思う。

 ところが、鳥内監督の話を聞いてると、「セコい」はポジティブな言葉なのだ。

 「『アイツ、セコいねん』言うたら、最上級の褒め言葉やで。どんな意味かと説明しろと言われたら、なかなか難しい。いろいろ考えて動いて、ちゃんと得を出してくれるというか“実利”を生んでくれる選手かな。そのあたり、うまく書いといてよ(笑)」

 

 関西人独特のユーモアが炸裂する「鳥内節」がなんとも楽しいのだが、学生たちを観察する目は冷静で、淡々としている。

 5月19日には、東京・アミノバイタルフィールドで明治大学との定期戦が行われたが、試合開始の2時間半前、会場に集まってくる選手たちの姿を見て、鳥内監督は不吉な予言をしていた。

 「いま、笑っとる選手がおるやろ。あれ、4年生。試合前の緊張感がないねん。向こう4、5人で歩いてきとる選手たち、見える? 下級生やけど、あれだけニコニコみんなで話をしとったら、フットボールのことを考えてるようには思えへん。ああいうところで、4年生がビシッと言えるかどうかで違ってくるんやけどね。今日は、何かミスが起きるで」

 試合は関学が26対21とリードし、残り1秒を迎える。攻撃権は明治。明治の逆転の祈りを込めたパスは、エンドゾーンへ。明治が取れば逆転、失敗ならば関学の勝利。

 何本もの腕が突き出されたが、ボールをキャッチしたのは明治の選手だった。

 27対26。ラストワンプレーでの逆転劇だった。

 試合後、鳥内監督は私にこう話しかけてきた。「な、言った通りやろ」

 関学サイドからすれば、逆転される伏線があった。前半から小さなミスが重なり、終盤にもここでファーストダウンを取れば試合を決められる。

 ここで、しっかりとパントを蹴れば、という場面でブロックされた。4年生のミスが重なっていた。

 鳥内監督は言う。

 「4年生が四六時中フットボールのことを考えて、試合でも一生懸命プレーしてたら、下級生だって何とかしたいと思う。緩んでるからミスも出る。こんな負け方しとったら、カッコ悪い。今度また試合があるから、4年生がどう考え、どう行動するかやね」

 鳥内監督には最後のシーズンだという気負いはない。

 「関学は4年生のチーム。監督最後のシーズンなんてどうでもええ。学生が、4年生が最後のシーズンに、どれだけフットボールのことを考え続けられるか、それが問われているわけだから」

 さて、手痛い敗戦を受けて、関学の4年生はどんなことを思うのだろうか。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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