【越山若水】戦後最大の思想家ともいわれる丸山眞男は、東京大助教授だった30歳のときに陸軍の二等兵として徴兵された。この超エリートを待っていたのは、暴力。「中学にも進んでいないであろう一等兵」から、たびたび理不尽に殴られた▼その一等兵と同じように「『丸山眞男』をひっぱたきたい」と題した論文が、ひと昔前に話題になったことがある。「31歳フリーター。希望は、戦争」と副題にあって、胸がざわざわとした。何があっても否定されるべき戦争を持ち出したことに嫌悪感も湧いた▼論文はネットでも読むことができる。詳しくはそちらに譲るとして、筆者の赤木智弘さんの目的は貧困に苦しむ自身ら若者世代の苦境と、前の世代との不平等を訴える点にあった。丸山眞男は「持つ者」の象徴であり、不平等をひっくり返す手段として戦争を挙げたのだった▼またも「戦争」が出てきた。ビザなし交流訪問団に同行して、国後島を訪れた丸山穂高衆院議員だ。北方領土を取り返すのに「戦争をしないとどうしようもなくないですか」などと、公の席で元島民に問うたという▼胸がざわつく、という程度では済まない。先の赤木さんとはまるで立場が異なる。まかり間違えば国を戦争へと導きかねないのに、あまりに無自覚なのが腹立たしい。同姓の思想家の話から始めたのに全く他意はなかったが、ひっぱたきたくなる。

関連記事