55年ぶりに福井県内の野外で誕生したひなと、親鳥のたからくん=5月14日午後1時35分ごろ、福井県越前市安養寺町

 福井県と同県越前市は5月14日、同市安養寺町に営巣している国の特別天然記念物コウノトリのペアの卵がふ化し、少なくとも2羽が誕生したと発表した。ペアは、2016年に同市坂口地区で放鳥した雄「たからくん」と、同年に兵庫県豊岡市で生まれた雌「みやびちゃん」。福井県内で野外ペアのひな誕生が確認されたのは、国内野生種の絶滅前に最後のふ化が確認された1964年の小浜市以来55年ぶり。誕生したひなのうち1羽は死んだ。

 たからくんは、県が越前市白山地区で飼育している「ふっくん」「さっちゃん」ペアが別のペアの有精卵を温める「托卵(たくらん)」で16年5月にふ化、同9月に放鳥された。雌は同4月に兵庫県豊岡市の人工巣塔で生まれ、徳島県鳴門市でたからくんと行動をともにする姿が頻繁に確認されていた。

 2羽は今年3月に白山地区で目撃され、同21日には安養寺町の人工巣塔で巣作りを始めた。4月5日以降は巣に伏せる時間が長くなり、今月10日から親鳥がひなに餌を与えるため巣の中に餌をはき戻す様子が確認されていた。

 13日に、ひな1羽が巣から顔を出す様子を越前市の男性がビデオカメラで撮影し、福井県がふ化を確認。14日は親鳥が餌をはき戻して餌を与えるなど世話をする姿が見られた。ただ、ふ化した複数のうち1羽は巣の外に放り出され死んだ。

 巣は高さ12メートルの位置にあり、ひなの正確な数は分かっていない。県によると、ひなが順調に成長すれば7月中旬ごろ巣立つ。

 野外での繁殖は、郷公園がある兵庫県豊岡市周辺から、鳴門市、京都府京丹後市などへ広がり、兵庫県内を除くと全国で5例目。

 県や越前市は、ペアやひなを刺激しないように、離れた場所からマナーを守り観察するよう呼び掛けている。

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