「仏教をしっかり学びたい」と話す柴田さん夫婦=京都市中京区の花園大学

 福井県福井市出身の84歳の男性が今春、82歳の妻と一緒に花園大学(京都市)に入学、キャンパスライフを満喫している。大手企業の役員まで上り詰め、退職後には得度して長野県の寺の住職も務めてきた男性は「若い学生と仏教について議論するのが楽しい」と、熱心に授業を受けている。

 男性は柴田文啓(ぶんけい)さん。妻の弘子さんと文学部仏教学科に入学した。花園大学によると、1949年の開学以来、これまでの最年長入学者という。

 柴田さんは福井県立高志高校から福井大学工学部に進み、卒業後に工業計器大手の横河電機に就職。米国の電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社設立にかかわるなどした。取締役、横河アメリカ社社長を歴任し62歳で退職した。

 父を戦争で亡くし、小さいころから仏壇に手を合わせる母の後ろ姿を見て育った。30歳のころに禅に取り組んだことを機に、退職後僧侶になることを決めた。1年余の修行を積み2001年、10年以上無住だった長野県千曲市の臨済宗妙心寺派の開眼寺の住職となった。

 宗派では宗門活性化推進局顧問を務め、空き寺対策の一環として、シニア世代の僧侶への“リクルート”を推進。これまで70人近くの社会人が得度、20人以上が寺の住職になったという。

 昨秋、花園大学が50歳以上の入学生の授業料を割り引く「100年の学び奨学金」制度を新設することを知った。開眼寺の後継者も見つかったことで、「これまで体系的に仏教を学んだことがなく、第二の人生をささげてきた仏教をしっかりと学びたい」と考えた。弘子さんにも呼び掛け、一緒に入学を決めた。

 弘子さんと京都市内の寺に下宿、仲良く通う。柴田さんは葬儀や法事、講演会などで授業に出られないこともあるが、大学生活が初めてという弘子さんは皆勤。「楽しくて仕方がない」と話す。体育の授業でも、2人は孫より年下の学生に交じり、ダンスや体操に汗を流す。

 「入学以降、自分が80代ということを忘れている」と笑う柴田さん。生活が落ち着いたら茶道サークルに入るつもりだ。「学び直しや人生の振り返りのため、70代、80代で大学に入学する機運が高まれば、余生も楽しくなるのでは」と話している。

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