前店主から店舗を借りて独立した三寺さん(左)。初期投資を抑えた開業を、組合も後押しする=福井県福井市のヘアーサロンH&M’s

 若手理容師の開業を後押ししようと、福井県理容生活衛生同業組合(中野達也理事長)は、廃業予定の理髪店舗を再利用するサポート事業を始めた。前店主をオーナーとして店舗を賃貸するため、設備をそのまま利用できるほか、顧客を引き継げるなど初期投資を抑えた開業が可能。店主の高齢化に加え、低料金のチェーン店に押され理容師を志す若者も減る中、「まちの床屋さん」復活の一手にしたい考えだ。

 県内の理容師でつくる同組合の加入者は現在490人。最盛期より半減し、平均年齢はおよそ60歳で、80代が1割を占める。「高齢化と後継者不足が最大の課題。専門学校の入学者も少ない」と話すのは、同組合の奥村数馬理事(70)。理容店の子弟が修行を積んで店を継ぐパターンが崩壊し、低料金のチェーン店が増加する現状にも危機感を募らせる。

 組合がサポート事業のヒントとしたのが、福井市の三寺正敏さん(33)のケースだった。市内の店で10年勤めた三寺さんは、高齢で引退を考えていた店主を自ら見つけ、不動産業者を介して交渉、昨秋に賃貸で店舗をそのまま引き継いだ。

 通常、理容師の開業には、専用の椅子や洗髪台など、設備や店舗工事で1千万円以上掛かる。三寺さんは「借金せずに開業できた。跡継ぎでもない限り、ゼロから店をつくるのは大変」と打ち明ける。

 メリットは資金面だけではなかった。以前の店主の顧客も引き継ぐことができ、「50年通ってくれるお客もいる。今後は新規開拓にも力を入れたい」と意気込む。

 組合はこの事例を参考に「居抜き開業サポート事業」をスタートさせ、ホームページで発信している。奥村理事は「店主は店を賃貸できるし、若手は安く開業できて双方にメリットがある」と話す。不動産仲介や保険、融資など組合がサポートしていく。現在は福井市、坂井市、越前市、小浜市から1件ずつ紹介可能な物件が登録されている。

 三寺さんは「低リスクで開業できる制度ができたので、若い人たちがもっと理容業界に入ってきてくれたら」と話している。

関連記事