中学生向けに問答形式で示された入門書シリーズの一つだが、驚くべき平明さと深さで詩の持つ意味と価値、詩の書き方、読み方をつづっている。

 質問は率直だ。

「授業で詩を勉強したのですが、あまり好きになれませんでした」

 著者は言葉を尽くして詩の本質を伝えようとする。

「(詩は)言葉によって、言葉にならないものを表現しようとする芸術です」

「そうした(語り得ない)思いによって、他の人とこの世界と、あらゆる歴史と、あらゆる存在と、つながろうとする試みでもあります」

 苦しみや悲しみのさなか、詩は傷ついた自分を癒やし、不安から救い出してくれる。そのためには詩を読むよりも詩を書くことだ。誰もが詩情を内に宿している。能力や他人の評価は関係ない。書くことで自分が必要とする言葉に出合い、その言葉を人に贈ることもできる――。

「どうして詩を贈ることもすすめるのですか」

 著者は答える。世の中の贈り物の中で言葉はもっとも美しく、もっとも長く生き続けるものだから。若い頃、詩を読まず、書かなかったことを自分は後悔している。詩と出合っていれば、あれほど孤独に苦しまずにすんだのではないか。自分の中に確かなものを見出だせたのではないか。もっと深く他者を感じることができたのではないか。

 著者が深く影響を受けた美しく哀しい詩の数々が紹介される。詩によって救われ、生きる力を与えられて人生が根本から変わる経験をした著者だからこそ書けた入魂の一書である。

(平凡社 1400円+税)=片岡義博

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