【論説】福井県内の企業の技術を結集し、開発が進む超小型人工衛星「県民衛星」が2020年度の上半期(4月~9月)、ロシアのソユーズロケットに載せてカザフスタンの宇宙基地から打ち上げられることになった。なかなかスケジュールが固まらずに気をもんだが、搭載されるロケットが決まったことで、ようやく機体の製造がスタートする。

 当初の予定では、県民衛星は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証プログラム」事業を活用し、19年度中にイプシロンロケットに載せて打ち上げるスケジュールを描いていた。しかしJAXAの計画が遅れたことで20年度末に延期になり、場合によってはさらに遅れる可能性も懸念されていた。

 搭載されるロケットが決まらないことには、人工衛星をどのような大きさにするかなど詳細な設計を立てたり、製造に取りかかったりすることができない。県民衛星の開発を担う技術研究組合のメンバーからは「機体の製造や、県民衛星を活用したビジネスを早く進めたい」との声が上がり、確実で早期に打ち上げ可能なロシアのロケットを活用する方向に転換した。

 県民衛星は▽防災▽観光▽農業―などの分野での活用が計画されている。打ち上げが成功すれば人工衛星製造に関する福井の技術が広く認知され、国内外から多くの受注が期待される。量産化への道が開け、ゆくゆくは福井の基幹産業として発展する可能性もある。

 宇宙に関しては、このところ心躍るニュースが相次いでいる。JAXAの探査機はやぶさ2が、小惑星りゅうぐうの表面に金属弾を撃ち込み、クレーターをつくる世界初の実験に成功。日本を含む国際チームが史上初めてブラックホールを撮影した偉業は、専門家から「ノーベル賞級の成果」と評された。

 こうした宇宙に関する国内外での研究の盛り上がりもあってか、県内でも宇宙や科学に興味を持つ子どもたちは着実に増えている。この3月には中学生10人が渡米して米航空宇宙局(NASA)などを見学。米国の最先端の宇宙研究について理解を深め、「将来は宇宙に関わる仕事がしたい」「人工衛星を造りたい」などと思いを語った。

 県民衛星は、福井の新たな産業としての可能性を秘めているのに加え、子どもたちの夢をつなぐ第一歩になる。技術組合では5月中にも試験機の製造に着手し、秋には実用機の製造に取りかかる計画という。着実に作業を進め、打ち上げを成功させてほしい。

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