【越山若水】ヒグマやエゾシカ、イヌワシ、オオワシ。自然ガイドの女性が自ら撮った写真は、どれも見事だった。女性は大自然や野生に憧れて移住してきたという。その言葉通り、希少な被写体に喜び勇んでぐいぐい近寄っていったのが分かる▼おととしの夏に訪ねた北海道・知床のホテルでのことである。たくましく日焼けしたその女性の生き方も魅力的だったが、とりわけシマフクロウが心に残った。何かをじっと見据える写真の1羽に気圧(けお)された▼実物は、翼を広げると2メートル近くにもなるらしい。フクロウとしては世界一大きく、道内でも知床など限られた地域でしか見られない。すみかは深い森だ。巨体なので大樹でないと巣を作りにくい。生息数を減らしているのは推して知るべしである。いまは140羽が残るだけだという▼得も言われぬ威厳に、アイヌの人々も打たれたようだ。「コタンコロカムイ」といってあがめた。村の守護神という意味だ。土産品店をのぞけば多彩な木彫品が並んでいる。実物大もある。その前に立つと「フムフーム」と重低音の鳴き声が響いてきそうな気になる▼先だってアイヌ新法が成立した。100年以上も前から和人との同化を迫られてきて、やっと先住民族と認められた。いま、道内は観光客でいっぱいだろう。彼らの心に伝わるといい。鳥も獣も神だと敬うアイヌの優しい共生の文化が…。

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