【論説】「令和」が幕を開けた。天皇陛下の生前退位による代替わりという祝賀ムードがあふれる中、平成を問い直し、新時代に積み残された多くの課題をどう解決に向かわせることができるのか、一人一人が考える機会としたい。

 ■憎悪と報復■

 「平成の30年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちました」。前天皇が2月の在位30周年に語られた言葉だ。

 戦争体験から来る重い発言である。ただ、海外に目を向けると、冷戦構造は崩壊したものの、民族や宗教などに起因する紛争やテロは後を絶たない。

 直近でいえば、3月にニュージーランドで起きた銃乱射事件や、先月のスリランカ連続爆破テロでは、日本人を含む大勢の犠牲者が出た。過激派組織「イスラム国」(IS)は拠点を失ったが、ISを巡るテロは各国で相次いでいる。

 こうした憎悪と報復の連鎖を絶たなければならないが、一方で自国第一主義や移民排斥を掲げる指導者、政党が台頭。冷戦の終焉(しゅうえん)で協調、グローバル化へ向かうはずが、対立や分断へと後戻りしようとしている。

 ■新たな冷戦■

 それどころか、新たな冷戦が取り沙汰されている。米中の貿易摩擦は覇権争いの様相を呈し、中距離核戦力などを巡り米ロもまた時代を逆行させるかのような事態に陥っている。

 北朝鮮の核・ミサイル問題、中国の軍備増強を背景に、日本もまた軍拡路線にかじを切ろうとしている。護衛艦の空母化や長距離巡航ミサイル開発などは専守防衛の域を逸脱する懸念がある。

 2015年に成立した安全保障関連法で「戦争のできる国」に変わったとの指摘もある。身の丈にあった防衛体制に加え、中国やロシアは無論、北朝鮮とも外交手段を通じた問題解決が欠かせない。

 平成は阪神大震災や東日本大震災などの災害が国の土台を揺さぶった。福井県内でも豪雨や豪雪禍に苦しんだ。幸い大きな地震には遭わなかったが、いつ、どこで起きてもおかしくないことを肝に銘じたい。

 ■共生社会■

 世界で対立や分断があらわになる中、日本でも格差や差別、分断といった傾向が強まっている。在日外国人へのヘイト発言、女性や性的少数者への暴言は収まらない。平成で爆発的に進展したインターネットは、つながりやすさの一方で差別や排外主義をあおるツールでもある。正規、非正規雇用を巡る所得格差、社会保障制度では世代間格差といった弊害も目立つ。

 人口の東京一極集中が進む一方、流出が止まらない地方では地域の活力が失われるばかりだ。対等の関係といわれながら国の指示待ちといった自治体も少なくない。自治体は主体性を取り戻し、地域戦略を練り直す必要がある。

 災害により支援の輪が広がり、平成はボランティアが根付いた時代ともいえる。「共助」は昨年の福井国体・障スポで掲げた「融合」とともに目指す先は「共生」社会だ。それは寛容の精神を持ち、対話を繰り返すことで育まれる。日本が成熟国家になるために欠かせない道ではないか。

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