愛着ある旅館の看板を前に笑顔を見せる山野聡仁社長(右)と女将=福井県越前町高佐

 5月1日の改元を前に「平成」と名の付く福井県内の施設や地域の関係者に、元号とともに歩んだ30年余りの思い出や「令和」への期待を聞いた。

 越前町高佐の料理旅館「平成」は、まさに元号が平成に変わった1989年4月にオープンした。平成とともに歩んだ旅館だけに「改元と同時に名前も変更?」と心配する声も多いらしいが、山野聡仁社長(44)と母親の女将(72)は「愛着ある旅館名。令和の時代も『平成』でいきますよ」と笑う。

 「『平らに成る』とは、お客さまの心が穏やかになり、覚えやすい文字」。聡仁社長の父親の初代社長(70)と女将が、元号名をそのまま旅館名に充てた。

 以来、県内外でアピールに力を注いできた。「越前町は『平成』であります」と言い切った元号発表会見のようなテレビCMも、旅館名を印象付けるためだ。今では認知度が高まり、日帰り利用客だけで年間5万人が訪れる。

 オープン直後に越前町で起きた岩石崩落事故、阪神大震災…。平成は災禍が多く、客足が止まる苦難もあった。97年の重油流出事故は越前がにのシーズンと重なり、大打撃を受けた。だが大口キャンセルがあった旅行会社の担当者から「この埋め合わせは必ずさせていただきます」との手紙を受け取り、数年後その担当者の手配で大勢の宿泊客が来てくれた。昭子さんは「忘れられない出来事」と人とのつながりに思いをはせる。

 平成最後の営業日となる30日の宿泊予約は満室。この夜はカウントダウンの宴席を設け、利用客と明るく新時代を迎える。

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