【論説】原子力規制委員会が原発のテロ対策施設の完成期限延長を認めず、施設が未完成なら原発は停止するとの判断を示した。関西、四国、九州3電力は、再稼働済みを含め5原発10基で完成期限が約1~2年半遅れるとの見通しで、その間の停止は必至の状況だ。

 県内では関西電力の原発での完成期限は高浜3、4号機が2020年8月と10月、大飯3、4号機は22年8月で、いずれも期限を約1年超過する見通し。さらに、40年超運転を目指す美浜3号機は21年10月が約1年半、高浜1、2号機は21年6月が約2年半遅れる見込みとしている。

 大型航空機の衝突などのテロ攻撃に遭っても、原発の安全を確保するバックアップ施設で「特定重大事故等対処施設」(特重施設)と呼ばれる。原子炉建屋との同時被災を防ぐため、100メートル以上離れて設置。原子炉を冷却する注水設備や電源、緊急時制御室などを備え、遠隔操作で原子炉への注水などを行う。

 特重施設は、東京電力福島第1原発事故を教訓とした13年の新規制基準で義務付けられた。当初は施行から5年以内だったが、再稼働に向けた安全審査が長引いたため、各原発の工事計画審査終了から5年以内に改められた経緯がある。

 規制委の更田豊志委員長は「設置に手間取っているから、もう少しと繰り返していると、安全向上は望めない」と、期限延長を求める電力側を一蹴した格好だ。安全の要ともいえる施設であり「新規制不適合」状態である以上、稼働停止はやむを得ない。

 ただ、電力側にとっては「先例がない施設」だけに遅れを余儀なくされている面もあるようだ。関電によると、山を切り開いたり、工事用道路やトンネルなど大規模な工事を、24時間態勢で進めているという。

 難工事であることは、先月の高浜原発視察で、特重施設の現場を見た更田氏も確認したはずだ。「できるだけ強く、しっかりした施設を造ろうとしていると感じた」などと感想を述べている。各原発で地形などが異なり、工事は一様ではない。期限をひとくくりに切る前に、状況を丁寧に確認していく方が安全性の向上に資するのではないか。

 関電の岩根茂樹社長は25日の会見で「期限に間に合わせるために最大限の努力をする」と述べたが、工事の短縮で事故の頻発も懸念される。代替措置などを含め規制委に説明する考えを示したが、更田氏は「代替する手段があるとは極めて考えにくい」としている。

 原発を止めても、建屋内には多くの使用済み燃料があり、リスクは残ったままとの指摘もある。規制委はそうした疑問にも答える必要があるだろう。

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