(左画像)1/700 旧日本海軍航空母艦「赤城」、(右画像)1/700 旧日本海軍航空戦艦「伊勢」 制作:R工廠

 1958年12月に産声をあげた国産プラモデルの歴史は今年で60周年を迎えた。その長い歴史を紐解いた時、多くの模型ファンの心を掴み続けているのが、軍艦・航空機・戦車などの『スケールモデル』(※縮尺に基づいて忠実に再現した模型)だ。今回、旧日本海軍の艦艇を超絶技巧で再現するトップモデラー・R工廠氏にインタビューを実施。わずかな情報を元に艦艇を再現した際のカタルシスや、航空母艦「赤城」への熱い想いを聞いた。

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■現存しない艦をわずかな「資料」と「創造力」で再現した際のカタルシス

 スケールモデルに目覚めたきっかけについてR工廠氏は、「小学生のころから祖父の影響で日本海軍に興味を持ち、プラモデルでニチモ30センチシリーズの戦艦『大和』を作ってお風呂で遊んでいたのがきっかけです」と振り返る。

 では、大人になってもスケールモデルに挑む、その“浪漫”とは一体なんなのだろうか?

 「基本、私は日本海軍の艦艇しか制作しません。どこが魅力かといえば、資料が少ない中、限られた情報と創造力のみで艦艇を再現させる部分に浪漫を感じています。これまで、そうやっていろいろな艦艇を“一艦入魂”で制作してきました。その中で強いてお気に入りをあげるなら、最近『月刊モデルグラフィックス』(大日本絵画/2019年4月号)に掲載された日本海軍の重巡洋艦『青葉』でしょうか」。この作品は映画『この世界の片隅に』の片渕監督監修で、劇中に登場する青葉の大破着底直前を再現したもの。難しい技を考案・駆使して再現したのだと説明してくれた。

 これほどの技巧、一体どうやって腕を磨いてきたのかと聞くと、「コツコツ、ダラダラと細かい作業を積み上げていく地道な工程が苦にならない性格が幸いしているのかも(笑)」と笑顔を見せた。また、良い作品を作ろうと思ったときは、「なるべく苦労する方を選ぶようにしている」のだという。

 「良い作品というものは簡単には造れないと思っているので、制作時に簡単に済ますか、それともより手を入れるか? この分岐点に差し掛かった時はなるべく苦労する方を選ぶようにしています」と、スケールモデルへの情熱の一端を語ってくれた。

■日本軍艦艇の武骨さ、特に航空母艦の“不完全さ”に魅せられた

 旧日本海軍の航空母艦の中では、特に「赤城」が好きだと力説するR工廠氏。それは、他国とは異なる日本の歴史背景が関係しているのだそう。

 「第二次大戦中、日本艦艇は限られた予算の中で、どうやって優れたモノを作るか?を徹底的に模索していたんだと思います。そんな、試行錯誤の中から生み出された日本海軍艦艇のデザインが個人的には大好きです」とアピール。続けて、「曲線を多用しているために兵器としての量産性に向いていませんが(苦笑)、逆にその“職人技”に魅せられてしまいました」と目を輝かせた。

 中でも、多くの戦果をあげた航空母艦「赤城」には多くのこだわりがあるという。

 「赤城の見せ場は甲板裏の鉄骨・補強金むき出しの構造物だと思っていて、そこには特にこだわりました。専用のエッチングパーツがあるのですが、資料や図面を見ながらパーツが無い部分を追加し、より緻密に見えるように細工しています」。そして何より、「赤城」の魅力は“完成されていないデザイン性”だと強調する。

 「戦艦から途中改装されて航空母艦になったという経緯と、軍事的な試験的要素も各所に見られるため、およそスマートとは言えない武骨な船体が特長的です。飛行甲板前後の裏側の鉄骨むき出しの雰囲気も、男心をくすぐる部分ですね。モデラーとして、そうした“不完全要素”を自分の手で埋めたい、そんな挑戦心を刺激されるのが、『赤城』の魅力でもあります」

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