【論説】税率を8%から10%に引き上げる10月の消費税増税まで5カ月余りとなった。総額2兆円に上る増税対策の制度設計やレジ・経理システムの変更など、官民の準備が本格化しているが、分かりにくさも否めず、戸惑いの声が上がっている。景気の急降下を招かないよう、実効性のある制度にしなければならない。

 増税による増収分で賄う幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案が衆院を通過し、大型連休前後に参院で成立する見通しだ。増税の既定路線化は着々と進んでいる。一方で、安倍晋三首相は「リーマン・ショック級の事態」が起きれば、増税を先送りする構えを崩していない。

 安倍政権は2度増税を見送った経緯がある。16年はリーマン級の事態ではなかったのに「新しい判断」を持ち出して先送りした。現下の景気は米中貿易摩擦や中国経済の不振を背景に減速感が出ている。月例経済報告や日銀の短観では輸出の落ち込みは鮮明で、16年以上に先行きは楽観を許さない。

 世界経済に非常事態が起きれば、増税延期もやむを得ないだろう。だが、幼児無償化なども先送りされれば、混乱は避けられない。首相は増税しないリスクにも十分に目を向け、かじ取りに慎重を期すべきだ。

 増税対策にも万全を期す必要がある。ただ、消費不振が長引いた14年の二の舞いを避けるための景気対策と同時に、キャッシュレス化を進め、さらには中小企業支援も図ろうというのは、効果が薄れ、結果的に「一兎(いっと)も得ず」の事態を招かないかが危惧される。

 クレジットカードやQRコードなどを使って中小の店舗で決済すると、代金の5%がポイント還元される制度では、「中小事業者」と対象外の大企業の線引きがはっきりしていない。また、中小店舗は経済産業省のサイトなどで登録する必要があるが、知らない業者も少なくないという。

 カード会社に支払う手数料は上限を設けているものの、来年6月末までの期間が終われば、手数料負担が重くなるとみられ、参加に二の足を踏む中小事業者も相当数に及ぶ懸念がある。参加が低調なら景気対策にブレーキが掛かりかねない。政府は実効性をいま一度検証すべきだ。

 消費者の立場でいえば、高齢者や子どもなどキャッシュレス手段を持たない層が置き去りにされかねない。軽減税率では食料品などが8%に据え置かれる一方で、店内で食べる場合は10%が適用される。客の申告に委ねるとしているが、店側との間でトラブルが頻発する恐れもある。現場への周知が徹底されるかが鍵になる。

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