トークショーでラグビーだけでなくビジネスについても語る、ラグビーのイングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏=4月12日・東京都内のホテル

 ラグビーの前日本代表ヘッドコーチ(HC)で、現在イングランド代表のHCを務めるエディー・ジョーンズ氏がこのほど来日し、東京・帝国ホテル内にある「ハンティング・ワールド」で、ジョーンズ氏が監修した新作バッグの発表会があった。

 そこではジョーンズ氏のトークショーがあり、ビジネスやヒューマンスキルなど、ラグビー以外の教養も深い彼の姿が垣間見えた。

 私は4年前、“エディーさん”に連続インタビューを行い「エディー・ジョーンズとの対話」という本を上梓し、ビジネスの世界の最新話法をコーチングの現場に積極的に取り入れていたことが興味深かった。その姿勢は今も変わりがない。

 「私は書店に行くと、ビジネス書のコーナーで時間を費やします。ただし、ビジネス書の本質は昔から変わっていません。言っていることは同じなんです。売れているのは新しい表現を発見した本なのです」

 コーチと選手の年齢は離れていく。そうした時に大切になるのは、指導者の側が情報のアップデートを怠らないことだという。

 「コーチは“セールスマン”でなければなりません。ラグビーのような大きな集団で運営されている競技では、全員が同じ考えになることはあり得ません。ただし、指導者は同じ方向を向かせなければならない。選手たちにアイデアをセールスする必要があり、そのためには言葉を磨くことが欠かせないのです」

 そういえば昨年、日本のスポーツ界でパワハラや体罰問題が次々に報道されていた時期、エディーさんは、「日本の指導者は、もっともっと言葉に対して敏感にならなければいけません。読書が必要です」と力説していた。

 トークショーの後、エディーさんは記者からの質問に答えた際に、日本で9月20日から始まるワールドカップ(W杯)に向けてどんな準備をしているかに話が及んだ。

 イングランドは2月から3月にかけて行われる、ヨーロッパの強豪6カ国の対抗戦「シックスネーションズ」を戦い終えたばかり。結果は3勝1敗1分け。優勝を狙っていただけに現地メディアは辛めの評価をしたが、エディーさんは泰然自若としていた。

 「シックスネーションズの結果は、W杯とは関係がありません。20代前半の若手が経験を積み、リーダーシップを発揮する場面も見られました。いい準備ができたと思っています」

 エディーさんは、以前から若手の起用に積極的だった。「代表が進化していくためには、常に一定数の選手を入れ替える必要があります」というのが、エディーさんの持論だからだ。

 若手にチーム哲学を浸透させるためには、ヘッドコーチが先頭に立って、アイデアをセールスしなければならないというわけだ。

 そして最後に、私がエディーさんの体調について尋ねると、通訳を通さずにこう答えた。「カンペキ」

 東京にいる間もクロスフィットなど、ハードなトレーニングを欠かさないエディーさん。

 「準備の達人」が、W杯でどんな手腕を発揮するのか、楽しみで仕方がない。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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