【越山若水】横書きが苦手で、頭の中でいちいち縦書きに直して読む、と言っていたのは脚本家の向田邦子さんだ。いまに新聞も横書きになって縦書きは神主の祝詞(のりと)くらいしか残らないのではないかと心配していた▼亡くなったのは1981年だから、もう40年ほども前の憂いである。予測の矢は的をそれ、横書きメールが幅を利かせるご時世でも新聞は縦書きで頑張っている。向田さんが長命だったなら「なんて石頭」と、からかってくれたかもしれない。ドラマの頑固おやじを描くように▼お気づきだろう。福井新聞はきょうから模様替えをした。本欄も文字のサイズが大きくなった。1行の字数が倍の20字に増え、総字数も3字多い555字になった。5のゾロ目である。ばくち好きの悪趣味ね、と冷笑する誰かの声が聞こえそうな気がするが、縁起はよろしかろうと衆議一決した▼例えば5を漢数字にしてみると、さまざまな熟語を思いつく。世界は「五大陸」から成り、人は「五体」に「五臓」六腑(ろっぷ)を収めている。「五感」を持ち「五穀」を「五味」で堪能する。このように、五の付く言葉は人世の基本に関わるらしい▼基本といえば、文章は起承転結を考えて書くよう教わった。計4段落で済むところ、新しい本欄は5段落。転をもう一つ加えて、ふたひねりしたいと欲張った。転々として「五里霧中」に迷わないよう心掛けたい。

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