【越山若水】「たった1枚の写真だが、非常に大きな意味を持った1枚」。ブラックホール撮影についての会見で出た言葉は、人類で初めて月を歩いたアームストロング船長を思い起こす言い回しだった。にわかに興味を覚え、図書館に走った▼不思議いっぱいの天体だ。通常でいう表面はない。そこに何か物質があれば中心部に引き込まれる運命。「事象の地平線」と呼ばれる境界面が代わりに想定されている▼その重力からは光も脱出できないが、境界の少し外にあって、ブラックホールから遠ざかろうとする光はどう映るか。「とてつもなくゆっくり」進んでいると認識されるそうだ▼本紙が掲載した「黒い穴」の写真をご記憶と思う。周囲のリング状の輝きは、強大な重力にゆがめられた時空で、もがいている光の姿だったといえようか▼何冊か本をめくっていると、一つ混乱に突き当たった。ブラックホールは時おりエネルギーを放出している、というのである。すべてを吸い込む天体なのになぜ?▼研究していた車いすの天才科学者、故ホーキング博士も最初は困ったらしい。放出を否定しようと「考えても考えても消え去ってくれなかった」と言っている▼筆者などが理解できなくても、まあ当然か。分かる範囲で面白がっていればよいのだろう。何しろこの天体の存在は、アインシュタインも認めていなかったのである。

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