【論説】桜田義孝五輪相が同僚議員を「復興以上に大事」と発言し、事実上更迭された。失言を繰り返し、閣僚としての資質に疑問符が付いていたのに、安倍晋三首相は擁護し続投させてきた。任命、監督責任は重いと言わざるを得ない。「全閣僚が復興相」と言い続けてきた首相の信用度も問われる。

 安倍政権では、この2年間で不適切発言による政務三役の辞任が相次いでいる。東日本大震災を巡っては、2017年4月に今村雅弘復興相が「まだ東北で良かった」と発言。同年3月には務台俊介内閣府政務官が被災地に長靴を持参せず、背負われて水たまりを渡ったことについて「長靴業界はだいぶもうかったんじゃないか」と述べた。首相は大震災復興を最優先課題に挙げてきた。復興を後押しするどころか、被災者をおとしめてしまった以上、辞任は当然だった。

 18年1月には松本文明内閣府副大臣が沖縄での米軍ヘリコプターの不時着を巡り、国会で「それで何人死んだんだ」とやじを飛ばし辞任。今月5日には、選挙の応援演説で道路建設の国直轄調査に触れ「首相や副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と述べた塚田一郎国土交通副大臣が引責した。桜田氏で5人目となった。「1強」のおごり、緩みも甚だしい。

 桜田氏は就任当初から資質が問題視されてきた。五輪憲章を読んでいるかを問われ「話には聞いているが、自分は読んでいない」と答弁。兼務するサイバーセキュリティー担当として「自分でパソコンを打つことはない」と公言するなど、適材適所でないのは誰の目にも明らかだった。今回の発言では、菅義偉官房長官に電話で「こんなことを言ったみたいです」と報告。まるで自覚のない様子だったという。作家あさのあつこさんは、共同通信の取材に「政治家の質の低さに、怒りより恐怖を感じる」と述べている。

 気掛かりなのは「復興五輪」を掲げる東京五輪・パラリンピックへの影響だ。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長も、招致疑惑で先月、退任を表明したばかり。相次ぐ辞任劇は国民の五輪熱を冷ましかねない。被災地の岩手県出身で再登板の鈴木俊一氏にはイメージ回復に尽くしてもらいたい。

 首相は、塚田氏をかばい続けたことが批判を浴び、桜田氏は発言から2時間で更迭した。第1次安倍政権で閣僚の失言や事務所経費問題などにより支持率低下を招き、「消えた年金問題」も重なって参院選に敗北、退陣に追い込まれた経緯がある。新元号や新紙幣の公表で政権浮揚を図ったつもりが、身内に足をすくわれた格好だ。

 失言、放言の常連である麻生太郎副総理兼財務相は、財務省の文書改ざん問題などがあったのにもかかわらず、居座っている。失言しても「撤回、謝罪すれば大丈夫」。そうした風潮が閣僚は無論、官僚にまでまん延している節がある。末恐ろしい事態だ。

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