【越山若水】桜田義孝五輪相が辞任、との速報に触れて同僚が言った。「なんなんですかね、このレッカは」。聞いてすぐにはレッカの字が浮かばなかったものの、ため息交じりだったので分かった▼「劣化」である。政治家の質はここまで落ちたか、という嘆き。記者風情が偉そうに…といわれても、この大臣のお粗末さにはそう言うほかはなさそうだ▼失言に読み間違い、稚拙な会見に遅刻と、国民がいたたまれなくなるような話の山盛りだった。この人に五輪・パラリンピックは荷が重い、と感じた向きは多いだろう▼その大臣より前に忖度(そんたく)発言で辞めた副大臣もいた。やっぱり劣化だと言いたくなるが、政治家なんて日本にはほとんどいない、と伊藤惇夫著「永田町『悪魔の辞典』」にはある▼一般に政治家と呼ばれていても大半は政治屋だ、と。15年前の本を改めて引用すると、作家や画家ら「家」の付く仕事は個人の能力による一代限りのもの▼一方「屋」の付く職業は、先祖代々長く続くほど価値が出る。秘伝のたれを100年継ぎ足すうなぎ屋とか歌舞伎の「音羽屋」「成駒屋」とか▼では、前五輪相は何だったのか。志高く、優れた手腕を発揮したとは聞かないし、大向こうから「日本一」の声が掛かるでもなし。これは、家も屋も付けられない人に大役があてがわれた悲劇だろう。配役したのは世襲の首相である。

関連記事