処理した魚の写真を撮り、料理人らに送る長谷川拓さん=福井県敦賀市蓬莱町の相木魚問屋

 鮮魚卸売りの越前魚信(福井県福井市花堂中2丁目、長谷川拓代表)は、鮮度を長期間保つ処理と、スマートフォンで魚の写真を送って見てもらった上で取引する独自の手法で、県内外の高級飲食店に鮮魚を販売している。使う料理人は「身の質と美しさが全然違う」と絶賛している。

 長谷川代表は福井県鯖江市出身で、約10年前に関西からUターン。兵庫県の魚類飼料メーカーで働いた経験などから、福井の新鮮な海産物を県内外に発信したいと考え、2015年7月に創業した。

 一番の売りは「腐る要素を全て排除する」という処理方法だ。早朝に福井県敦賀市や南越前町の漁港で魚を仕入れ、その場で「神経締め」と呼ばれる処理を施し、血を抜き内臓を除去する。神経締めとは、針金を背骨沿いに通して神経を壊し、腐敗を遅らせる方法。活魚でなくても長期間、鮮度を保つことができるという。

 敦賀水産卸売市場(敦賀市蓬莱町)の仕入れは、市場近くの相木魚問屋に依頼。毎朝午前8時ごろから、同店で手際よく処理を施す。

 処理を終えると、スマホで写真を撮り、取引先の料理人らに送信。注文が入れば、その日のうちに届ける。料理人は、魚の艶や太り具合などを見て判断できる。長谷川代表は「少量の取引だからこそ、きめ細かいやりとりができる」と話す。

 一般の業者は簡単な処理を施すことはあるが、基本的にはそのまま飲食店などに届けられ、生だと数日で腐敗してしまうという。一方、長谷川代表の処理なら20日ほど持つため「新鮮なうちに使い切れるし、熟成させることもできる。使い勝手がいい」という。

 販売先の飲食店は福井市内のレストランや日本料理店、すし店を中心に県内外の15店ほどで、高級店が多い。「鮨 十兵衛」(福井市文京5丁目)の塚田哲也店主は「いい魚を仕入れることができて助かっている。しばらく寝かすと身の硬さがとれてうま味も増す。長谷川さんは福井の食文化にとって重要な人」と賛辞を惜しまない。

 長谷川代表は一連の処理方法を「信締(しんじめ)」と名付け、2018年秋に商標登録。「処理した魚は一つの作品。料理人が自信を持ってお客に出せる魚を提供していきたい」と話している。

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